「世界に広がれ」ゲタ×バラ×ティッシュアート 福山が誇る地域の宝がコラボ 世界バラ会議発信へ高校生が奮闘

“ばらのまち” 広島県福山市で2025年に開かれる「世界バラ会議」をPRする高校生がいます。地元の伝統産業「ゲタ」を使ってアピールする高校生と、ある身近な材料でバラを作る男性との思いが重なった取り組みです。

10日、福山市西部にある「松永はきもの資料館」に集まった人たちが作っていたのは、ティッシュで作るバラです。

イベントの企画者は、福山葦陽高校1年の 本多春翔 さんです。世界バラ会議をきっかけに、松永地域の活性化を目指そうという挑戦です。

1月、本多さんたちは、ティッシュアートを手がける 藤田孝士 さんを訪ねました。世界バラ会議を盛り上げるため、本多さんは、松永特産の「ゲタ」を発泡スチロールで巨大化。そこへティッシュで作ったバラを挿して色鮮やかなオブジェにするという構想を抱きました。

福山葦陽高校 1年 本多春翔 さん
「松永はだんじりという、みこしのようなものがある。それに長い間、この発泡スチロールで人形を作ってきているという歴史とかもあるので、それとこのティッシュアートと松永のげたと、この世界バラ会議のバラっていうのをかけ合わせてやりたいなと思っていて」

自分たちだけで作品を作るわけではありません。本多さんは、市民参加型で、「バラ」を作って、挿してもらおうというのです。そこで藤田さんにバラ作りの講師を依頼しました。

藤田孝士 さん
「これはまあ、ピラミッドのオブジェですけど、こういうようなの…」

本多春翔 さん
「そうです、そういう感じで敷き詰めて…」
「このゲタ自体はだいたい、畳1枚分。これがミニチュア版で、ゲタの足のところも作ってもらって」

「ティッシュは魔法の紙」バラの作り方は? サクラやお城まで

本多さんは、「バラ」作りを地元の中学3年生大村美優さんと体験しました。

藤田孝士 さん
「ティッシュを縦にします。これを半分に折ります…」

藤田さんは、ていねいに本田さんたちに教えていきます。ティッシュを折り終え、藤田さんが取り出したのは「バラ」とは縁のなさそうな型紙…。型紙をティッシュに押し当て、ハサミで縁取ります。広げてみると、花びらどころかまるで刀の刃文のよう…。それをノリづけし、ずらしながら重ねます。

バラの茎になる竹串に巻いていきます。なんだか、バラのつぼみに似てきました。花の「がく」を取り付けた後、一枚、一枚広げていきます…。見事な大輪の「バラ」の完成です。

水で溶かした絵の具をバラにかけると、色鮮やかな姿に。藤田さんによりますと、慣れたら10分で作れるといいます。

藤田孝士 さん
「ティッシュはすごい紙なんです。魔法の紙なんですよ。魔法の紙にするか、鼻とって捨てるか。だから、きみたちにティッシュアートのすばらしさをどんどん広めてもらう。期待しています」

ティッシュアートの作家として紹介してきた藤田さん…。アートの経験はありませんでしたが、70歳からティッシュを使った作品制作をはじめました。1000点ほどの作品が並ぶアトリエ兼展示場は、かつてカラオケ喫茶でした。

そこへ訪れた足の不自由なお客さんの「桜の花が咲いたけど、見に行けない」という声が転機になりました。藤田さんが桜を作って見てもらおうと、試行錯誤し、たどり着いたのがティッシュだったのです。

アトリエにはその時作った桜が大切に保管されていました。

藤田孝士 さん
「これが一番最初に作った、もうだいぶ、色あせましたけどね」

そこからは独学です。子ども会や学校などで教えるほどに。ですが、新型コロナの感染拡大で教えに行けなくなりました。

そんな中、孫からインスタグラムを教えてもらい、作品を出してみたところ、投稿した動画が3000万回を超えるようになったのです。

藤田孝士 さん
「わたしが持っている力があれば、どれでも貸しますから、どんどん利用して、自分の企画を通して、松永のためにがんばってください」

“地域の宝” 世界に広めるために

本多さんが次に起こした行動は、発泡スチロールでの巨大「ゲタ」作りです。2月25日、内装用のパテでゲタをコーティングしたり、巨大ゲタをすえ置く土台を作ったりしました。ここでも本多さんを支えた人がいます。

市内のクリーニング業・ダイニチの 山本圭祐 社長です。山本社長と社員3人がボランティアで本多さんの挑戦をサポートします。そこには山本社長の地域への思いがありました。

長年、松永地域の神社で行われている秋の例大祭で使う山車を、発泡スチロールで飾り付けていたのです。山本社長は、地域を担う本多さんたちに期待を寄せています。

ゲタにバラを飾り付けるイベントの本番前日…。会場にゲタが運び込まれました。高さおよそ2メートル、幅およそ1メートルの巨大なゲタが2つ現れました。木目調のシートを表面に貼り付け、鼻緒には福山が誇るデニムをあしらいました。いよいよ本番です…。

午前10時のイベントスタートを前に本多さんたちが準備を進めます。講師を頼まれていた藤田さんも駆け付けました。会場に集まった人たちも、興味津々です。

福山葦陽高校 1年 本多春翔 さん
「世界バラ会議が2025年に福山であるんですけども、この時には世界中からたくさんの方々が来られるので、その時に松永のゲタと、祭と、このティッシュアートを世界に広めていきたいな」

参加者たち
「バラじゃん。すご~い。えっ、これだけ? 簡単」
「これさ、小学校で教えてあげたら、めっちゃ人気者になれるで」

バラを作った人から、次々と巨大ゲタにバラを挿していきます。色とりどりのゲタになってきました…。

参加者たち
「想像以上に良いのができた気がしております」
「最初、失敗してあせったよなあ。でも、ちゃんとリカバリーしてきれいな花が作れました」

この日だけで、およそ70人が参加し、100本ものバラがゲタを彩ることになりました。本多さんの取り組みは終わったわけではありません。

本多春翔 さん
「約1年間かけて、世界バラ会議に向けて、市民のみなさんと一緒になって、作っていこうと思いますので、この松永地域だけでなくて、福山の市内の方でも続けていきたいなと思っています」

5月に市内で行われる「ばら祭」といったイベントでも協力を募る予定です。みんなでつくるバラは、本物以上の輝きを見せてくれています…。

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