水上恒司「すごくいい時間を過ごせる」 バンクシーの超話題作も見られる注目の展覧会

水上恒司さんが公式アンバサダー!

【女子的アートナビ】vol. 327

本展では、ドイツ・ミュンヘンにあるアーバン・アートと現代アートに特化した美術館、Museum of Urban and Contemporary Art(MUCA)が所蔵する作品60点以上を展示。

世界で大人気のストリートアーティスト、バンクシーの日本初公開となる大型彫刻作品や、ファッションデザイナーとしても活躍するKAWS(カウズ)の代表作をはじめ、アーバン・アートの世界を切り拓いてきたアーティストたち10名の作品を楽しめる展覧会です。

今回紹介されているアーバン・アートとは、現代都市社会から生まれたグラフィティ・アートやストリート・アート、ポスター・アートなどのこと。都市空間にある公共の壁や建物、橋などに描かれる作品も多く、政治的・社会的メッセージを伝えるときもあります。

そんな刺激的な作品が並ぶ展覧会の東京会場公式アンバサダーを務めるのは、俳優の水上恒司さん。独学で勉強して創作活動もされている水上さんにインタビューを行い、展覧会やアートのことなどお聞きしてきました!

展覧会全体が好き!

――まず、本展をご覧になって、どんな感想をもたれましたか?

水上さん 今回展示されている作品のアーティストたちは、世の中に対する批判やメッセージを恐れることなく、臆することなく提示していると感じました。僕自身は、まだキャリアとか知識とかいろいろ拙いので、そんな自分からすると、彼らのような活動はビビッてしまってなかなかできないのですけど、この作家たちはアートでちゃんと表現していて、そんな姿勢に心を打たれました。

――特に印象に残った作品、好きな作品はありますか?

水上さん リチャード・ハンブルトンの《突撃》は、パッと見たときの印象が好きですね。僕は陰が好きなので、その描き方とか見てしまいます。でも、ほぼすべての作品が、そのつくった時代の世の中に対するメッセージみたいなものがちゃんとあるから、どの作品が好きかと問われると、ひとつひとつ挙げていくときりがないです。例えば、女性のストリートアーティストとして活動しているスウーンの作品もすごくいいと思いますし、もちろんバンクシーもいいし、展覧会全体が好きという感じです。

――出品作家のなかで、以前から好きだったアーティストはいらっしゃいますか?

水上さん 好きとか嫌いとかはあまりなくて、ただ前から身近に感じていた作家はカウズかなと思います。彼の作品を見ていると、一番欲しくなりますね。フィギュアとかもありますし。

――本展で初めて知った作家さんも多いですか?

水上さん もちろんです。僕は創作活動をしていますけど、本当に素人なので、今回ほとんどのアーティストさんのことをはじめて知りました。多くの同世代の人たちと同じように、そんなにアートに詳しくない僕だからこそ、今回アンバサダーとして、こういう場で話すコメントのうちの何かがみなさんに伝わればいいなと思っています。

人生をより豊かにしてくれる…

――本展は、アーバン・アートの展覧会ですが、現代アートは少し難しいと思っているかたもいるようです。ゴッホやモネなどは親しみがあるけど、知らない作家だと難しく感じるのかもしれません。

水上さん ゴッホやモネは超有名だし、教科書に載っているのを見ているから知っていますけど、正直それで本当にゴッホのことを知っているのかはわからないですよね。ゴッホは知っていると言う人々も、じゃあゴッホはどういう技法で何が有名なのか、本当に知っている人は少ないと思う。それぐらい、アートの世界に対して、ちゃんと知ろうとしている人は少ないのではないかと思います。僕もそうです。

でも、知らないことがいけないわけではないですよね。そんな人間だからこその楽しみ方もあります。ふらっと展覧会を見に来て、作品の背景とか気になる人はその先を調べればいいと思います。僕の場合は、調べるというより、いろいろな作品を見ながら、家にある画材を使って自分の作品をこんなふうに描けば近い雰囲気になるかな、と消化しています。人それぞれ、展覧会の感じ方、消化の仕方はあると思います。

――まずは展覧会を見に来ていただかないと、その世界に触れられないですよね。

水上さん そうですね。見ないと、その先はないので。アートは、生きていくうえでは絶対的に必要なものではないかもしれません。僕が携わっている映画やドラマの世界も、なくても生きていける。衣食住があれば、人間は生きていけますから。でも、無駄とかいわれる娯楽や余興みたいなものを取り入れたほうが、より豊かに生きていける。そのなかのひとつがアートだと思います。だから、別に見なくてもいいんです。でも、興味が少しでも芽生えたら、絶対に見に来た方がいいです。アートは、人生をより豊かにしてくれるもののひとつですから。

アートは大きな刺激物

――俳優業のかたわら創作活動もされていて、数年前には個展も開催されました。いつ、どんなきっかけで、創作をはじめられたのですか?

水上さん 未就学児というか、僕の記憶がない本当に小さいころから絵を描いていました。絵を描くと、ほめられることが多かったので、それが気持ちよくて今日まで描き続けているのかなと思います。

――アート制作と演じることの相乗効果はありますか?

水上さん あると思います。そもそも演じるという行為は、時間をかけて必要なスキルや技術を身につければ、誰しも到達できるものだと思っています。僕はまだ道半ばですけど、いずれ演じ方はしっかりと身につくはずです。でも、実はその先、演じる人間がどんなふうに生きていきたいのか、あるいは今までどんなふうに生きてきたのか、という部分が芝居のときに透けて見えてくるので、僕はむしろその部分が大事だと思っています。その大事な部分のなかに、アートが大きな刺激物として存在しているので、その相乗効果は間違いなくあります。

――アートを見て、感じて、蓄積したものが、演じるときに内面からにじみ出てくるという感じでしょうか。

水上さん そうですね。努力だけではどうしようもない部分だと思います。同じMUCA展を見たとしても、人によって感じ方や見方は全然違いますよね。また、単に芸術に触れればいい、という話でもないと思います。

すごくいい時間を過ごせる

――創作活動と俳優業の両立で、大変なことはありますか?

水上さん 絵を描くのは職業にしていないので、負担ではないし、大変とは思わないです。僕の中での軸は芝居ですから。時間があるとき、描きたいときに描くという感じです。

――創作は、ゼロから生み出すので壁にぶつかるときとかありますか?

水上さん 芝居のほうでは、こうしたいけれどわからない、という感じで壁にぶつかることはあります。仕事の場合はそうなりますが、創作活動は趣味なので、壁にぶつかることもなくて、楽しんで描いています。

――今後、創作で挑戦してみたいことはありますか? 個展などの予定は?

水上さん 3Dの彫刻作品はやってみたいですね。彫刻刀を使って、手で彫り出していく創作物をつくってみたいと思っています。個展は、今のところは考えていません。

――いつかまた個展を開いてくださるとうれしいです。最後に、読者のかたにメッセージをいただけますか?

水上さん アートがわからない人でも、とりあえず水上がいろいろ言っていたから行ってみよう、という感じでもいいので、ぜひMUCA展に来ていただければ、すごくいい時間を過ごせるのではないかと思います。

――ありがとうございました!

取材を終えて…

まっすぐな眼差しで、質問に答えてくださった水上さん。24歳という若さながら、ご自身の考えをしっかりと確立され、ぶれない強さが伝わってきました。

そんな水上さんを魅了したMUCA展には、刺激的な作品が勢ぞろい。ぜひ、足を運んでみてくださいね! カウズのバラエティー豊かなブロンズ作品《カウズ・ブロンズ・エディション#1-12》(2023年)や、オークションで落札後すぐにシュレッダーで一部が細断されたバンクシーの有名な作品《Girl Without Balloon》(2018年)も展示されています。

Information

会期:2024年3月15日(金)~6月2日(日)
開館時間:10:00~19:00 金曜日・土曜日・祝日・祝前日・GW(4月27日~5月6日)は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
観覧料:【平日】一般 ¥2,400、大学・高校生 ¥1,700、小学・中学生 ¥1,000【土・日・祝】※5/6含む一般 ¥2,600、大学・高校生 ¥1,900、小学・中学生 ¥1,200

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