かつてないほど難易度の高い最終予選に。完敗マリ戦で大岩ジャパンに突きつけられた現実【U-23代表】

今夏のパリ五輪出場を目ざし、大岩剛監督が率いるU-23日本代表は4月、パリ五輪のアジア最終予選を兼ねるU-23アジアカップに臨む。最終予選を前に最後の活動となっているのが、3月のマリ、ウクライナとの2連戦だ。

すでに五輪出場を決めている両国を相手に国内組中心のチームがどこまで力を見せられるのか。今活動は重要な試金石と位置づけられた。

まず22日のマリ戦だが、指揮官は平河悠や藤尾翔太(ともに町田)、川﨑颯太(京都)や山田楓喜(東京V)らJリーグで結果を残している選手をスタメンに抜擢。欧州組の山本理仁(シント=トロイデン)が中盤で統率するという形で挑んだ。

最初は川﨑がアンカーに陣取る4-3-3でスタートしたが、相手がインサイドハーフを置くような流動的な形を取ってきたこともあり、川﨑と山本が並び、植中朝日(横浜)は藤尾と2トップを形成。強度の高いプレスから主導権を握ろうと試みた。

開始早々の2分に山田のFKから平河が先制点を奪うなど、入りは悪くなかった。しかし、徐々に相手の身体能力やスピードに押され始め、西尾隆矢(C大阪)の不用意なパスミスから決定機を作られるなど、対応に苦慮するようになる。そして34分には川﨑の横パスをカットされ、サンギャレに同点弾を浴びてしまった。

「前半は特に戸惑った選手が何人かいた。ミスが1つ、ボールを1回後ろに下げるだけで相手の流れになってしまう。自分たちの流れを選手たちが作れなかった」と大岩監督も厳しい評価をしていたが、苦戦を強いられたのは紛れもない事実だ。

細谷真大(柏)らを投入した後半もリズムを変えることが思うようにできず、相手のミドルシュートを守護神・野澤大志ブランドン(FC東京)がキャッチしきれず、2点目を失った。そして終盤にはスローインから途中出場のディアラに西尾がぶち抜かれ、マイナスのクロスからトラオレに3点目を奪われ、完敗。支配率やシュート数など全ての面でマリに力の差を突きつけられた。

特に気がかりだったのが、相手の出方を見ながらの対処能力だろう。

「正直、ゲームをやっているなかでは、僕と颯太の2枚が相手の3枚の真ん中に対してうまく圧をかけられなかった。そこは相手がうまかったと思うし、そこで1枚剥がしにくる欧州とはまた違うアフリカらしさに、僕らがアジャストしきれていなかった」と山本は反省の弁を口にしていたが、今季ベルギー1部で28試合(うち先発5試合)に出場し、大柄で屈強な選手と相まみえている彼でも対応に苦労したのだから、国際経験不足の国内組にはハードルが高かったのは事実だろう。

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とはいえ、最終予選は待ってくれない。日本は中国、UAE、韓国と同組で、そこで2位以内に入らなければ決勝トーナメントにも進めなくなる。パリ世代はコロナ禍の影響でU-20ワールドカップも、同アジア予選も戦っておらず、海外遠征の機会も失うなど、外国人選手と対峙してきた回数が極端に少ない。

そのうえで、欧州組が増え、鈴木唯人(ブレンビー)ら攻撃の中核を担う人材はおそらく招集できない。それだけに、マリと戦った多くの国内組が五輪切符を賭けた戦いに挑み、勝ち切るという重責を担うことになる。

かつてないほど難易度の高い最終予選になるが、強豪国から学んだ球際や激しさ、スピードや強さ、技術・戦術レベルの高さを教訓にするしかないのだ。

「1月のアジアカップを見ていても分かるように、アジア予選になれば、アバウトなボールを蹴り込まれる機会が増えると思うし、日本人は背が低いので、どう守るかという課題が出てくる。そこで個人、個人だけでなく、組織でしっかりとチャレンジ&カバーを徹底しないといけない。

一人ひとりの距離が遠かったら、こぼれ球も全部拾われてしまう。コミュニケーションを取ってやっていかないと、最終予選もこういう試合が続くと思うので、やるべきことを突き詰めていかないといけないと思います」

守備の軸を担う西尾も強調したが、1対1で勝てない以上は強固な組織で対抗するしかない。それはGK野澤も、ボランチの藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)も口を揃えていた点。まずは失点しない堅い守りを構築し、そのうえで、細谷や藤尾らアタッカー陣がしぶとく点を取るといった戦い方を研ぎ澄ませるしか、彼らが8大会連続五輪出場を達成する術はない。

過去の五輪代表を振り返っても、2004年アテネ大会や2016年リオデジャネイロ大会の五輪世代は「突破も難しいのではないか」と言われながら、ここ一番で結束力を高め、アクシデントを乗り越えて勝ち切った。

特に2004年はUAEラウンドで原因不明の体調不良に見舞われながら、キャプテンの鈴木啓太を中心に全員が同じ方向を見て戦い、修羅場を乗り越えた。今回のチームもそういった熱量が必要不可欠だ。25日のウクライナ戦では目に見える前進を示してもらいたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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