「東京のブルックリン」と呼ばれて久しく、さまざまな文化の発信地となっている蔵前。住民の感度の高さに呼応するかのように個性的なカフェのオープンが続いている。気さくな雰囲気と品の良さを兼ね備えたお店をリストアップした。
柔らかな曲線と極上の音響。『ARC』
2023年春、鳥越神社の目の前に忽然(こつぜん)と現れたスタイリッシュな空間は地元の人々を驚かせた。店主の西岡晴彦さんは実に多才で、鳥居を模してアーチ(ARC=湾曲)させたカウンターや真空管のオーディオアンプ、メニューカードのイラストも自作。そのクラフト感に魅せられて、神社へのお参りとセットで訪れる人も多い。店内の至るところに取り入れられた曲線を愛でつつ、臨場感抜群のジャズの響きに浸りたい。
『ARC』店舗詳細
ARC(アーチ) 住所:東京都台東区鳥越2-3-4 1F/営業時間:10:00~22:30LO(土・日は8:30~)/定休日:無/アクセス:地下鉄浅草線蔵前駅から徒歩6分
友人の部屋でくつろぐように。『トロワ』
大通りから一本入った住宅地の奥に明かりを灯すカフェは、通りに看板を出していない。それでも訪れる人が絶えないのは、小倉夫妻の柔らかい笑顔のもてなしが記憶に残るから。おすすめの品はレモンのハチミツ漬けがたっぷり入った紅茶やスイーツ。「カフェで自分自身を整えるのがライフスタイルになっていた」というご主人の思いが通じたかのように、一人でゆったりとくつろぐ客も多い。
『トロワ』店舗詳細
トロワ 住所:東京都台東区寿3-10-5 1F/営業時間:12:00~18:30LO/定休日:月・火(祝の場合は営業、代休あり)/アクセス:地下鉄大江戸線蔵前駅から徒歩3分
あふれる緑とアンティーク。『feb’s coffee&scone Blucca店』
「植物を眺めながらコーヒーが飲めたら最高!」という思いから生まれたコラボカフェ。思惑は見事に当たり、浅草本店のフラワーショップ『アンヴェール』の緑がアンティークのインテリアと調和し、この上ない居心地良さ。焼き上がったスコーンのバターの香りが漂いさらに多幸感に包まれる。サックリ、ふんわり食感のスコーンはプレーンのほか、シュトレンスコーンなど独創的なシーズナルも揃う。
『feb’s coffee&scone Blucca店』店舗詳細
feb’s coffee&scone Blucca店(フェブズ コーヒー アンド スコーン ブルッカ) 住所:東京都台東区寿3-5-9 /営業時間:8:30~17:30(フードは17:00LO)/定休日:火/アクセス:地下鉄大江戸線蔵前駅から徒歩1分
メルボルン流のコーヒー文化。『LUCENT COFFEE』
店内にテーブルはなく、L字型のベンチに腰かけてコーヒー片手に思い思いの時間を過ごす。店主の中田夫妻が勤めていたオーストラリア・メルボルンのカフェではよく見かける光景というが、それが東京の下町にもするりと溶けこむ。「豆本来の風味、産地の違いを楽しんでほしい」と浅煎り、シングルオリジンにこだわった。華やかなアロマと甘さ、果実味、続く余韻が豆の底力を実感させてくれる。
『LUCENT COFFEE』店舗詳細
LUCENT COFFEE(ルーセント コーヒー) 住所:東京都台東区寿1-17-12 レモンビル 1F/営業時間:8:00~17:00LO/定休日:火・水/アクセス:地下鉄銀座線田原町駅・大江戸線蔵前駅から徒歩5分
『喫茶 半月』の気品ある内装に心が華やぐ
南青山にあった伝説の名店「大坊珈琲店」へのリスペクトが込められた内装は、アンティーク家具中心の和洋折衷スタイルが絶妙で、つい長居したくなってしまう。隣の『半月焙煎研究所』で焙煎したてのコーヒーには喫茶の王道スイーツ、シュークリームやロールケーキを。そっとナイフを入れると、童心に帰ってしまいそう。休日にはエスプレッソにお酒を合わせたカクテルを楽しむ人も多い。
『喫茶 半月』店舗詳細
喫茶 半月 住所:東京都台東区蔵前4-14-11 ウグイスビル103/営業時間:12:00~18:30LO/定休日:不定/アクセス:地下鉄浅草線蔵前駅から徒歩1分
3匹のいぬとねこに会いに。『marble 蔵前』
壁の一面がそのまま窓になったような店内は明るい陽ざしに包まれ、溌剌(はつらつ)とした空気に満ちている。名物のいぬクッキーは店主の愛犬、柴犬のマーブルをかたどったもの。今ではブルドッグとビション・フリーゼも加わり、3匹はスイーツの上でポーズをとったり、お土産にと引っ張りだこ。意外にも、男性の一人客も多く、お皿の上でねこプリンを揺らすほほえましい姿も『marble』の日常になっている。
『marble 蔵前』店舗詳細
marble 蔵前 住所:東京都台東区蔵前4-1-4/営業時間:12:00~18:30LO/定休日:無/アクセス:地下鉄浅草線蔵前駅から徒歩3分
取材・文=平野かおり 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2024年2月号より