茨城県生涯学習センター 地域課題 不登校や引きこもりテーマに 学びの輪 受講後、支援活動に

子どもたちの電話相談を受ける平田美鈴さん=筑西市西方

茨城県生涯学習センターで地域課題の解決に向けた学びの輪が広がりを見せる。講座は従来の個人で楽しむ趣味教養型から、知識を役立てる地域還元型を重視。県内5カ所のセンターでは不登校や引きこもり、外国人の支援などのテーマに、受講者が2年間で200人を超えた。受講後は支援団体に就職したり団体を設立したり、実際に地域での活動につなげる動きが出ている。

「ひきこもり相談支援センターです。何かありましたか」

不登校やひきこもりとなった青少年を支援する「アイネット」(筑西市西方)の平田美鈴さん(23)が電話に答える。「困難を抱えている若者が多い。相談に自信を持って答えられるようにしたい」と話す。

大学3年の時に水戸生涯学習センターのプログラム「困難を抱える子ども・若者への支援」を受講。NPO法人の講話やフリースクールでの体験を通じ、学校に通いづらいと感じる子どもたちを支えたい気持ちが強まった。アイネットでインターンシップを経験後、昨年春、大学卒業とともに入社した。

「自分にも何かできることがあるはず。講座で学んだことを生かし、子どもたちに安心できる場所を提供したい」と話す。浅沼秀司理事長(70)は「支援の動きが若者を中心に広がってほしい」と期待する。

水戸生涯学習センターの同プログラムの受講者は30人を超えた。子どもへの向き合い方や不登校などについて学び、フリースクールを展開する団体9カ所で子どもたちと触れ合う体験も実施した。

センターの担当者は「学んで終わりではなく、現場での体験も受講後の活動につながるはず」と話す。

筑西市に住む山本桂子さん(46)は県西生涯学習センターのプログラム「外国人の子どもたちの教育支援を通した多文化共生」を受講。その後、外国人支援団体「フレンズサポーター」を立ち上げた。

所属するボランティアは6人。市内に住む外国人の小中学生6人に週2日、日本語の読み書きや宿題を指導し、その保護者には書類の記入などを手伝う。

活動は次第に認知され、市内の小学校3校で日本語サポーターも務める。課題として「地域全体での支援が十分ではない。困っている人のためにもっと助け合いたい」と話す。

県生涯学習センターは水戸、県西、県南、鹿行、県北の5カ所に設置され、歴史など趣味教養に関する講座を開講し、地域住民のニーズに応えてきた。

近年は市町村や大学、民間カルチャーセンターの講座が充実したこともあり、利用者数は右肩下がり。5カ所の年間利用者はピークの2009年がのべ79万人だったのに対し、コロナ禍の影響もあり22年は29万人まで減少。学んだ知識をいかに地域に還元できるかどうかも課題とされた。

県は21年度、講座を地域の課題解決を重視した内容に移行。3本柱として「現代的課題へのチャレンジ」「地域のリーダー育成・交流」「若者のトップランナー育成」を掲げ、市民団体と連携し、人材育成や地域づくりに力を入れている。

県生涯学習課は「身近な地域の課題解決へ学びを生かしてもらいたい」と期待を寄せる。

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