どうした青森山田!? 選手権優勝から3か月半、サニックス杯でまさかの7位。佐賀東戦で指揮官が雷を落とす。いったい何があったのか

今から3か月半前。青森山田は国立競技場で歓喜の瞬間を迎えていた。

昨年12月のU-18高円宮杯プレミアリーグに続く、日本一のタイトル。黒田剛前監督(現・町田監督)からバトンを受けた正木昌宣監督のもとで初めて選手権優勝を勝ち取り、“青森山田の強さは不変”であることを示した。

そして、時は経って3月半ば。チームは新たなスタートを切り、新シーズンに向けて各地のフェスティバルを転戦する時期を迎えた。しかし、状態は決して良くない。勝ったり、負けたり、この時期は不安定な戦いが続くもので、日本一を掴んだ昨季もシーズン前は多くの問題点を抱えていた。ただ、今年はそれ以上に厳しい状況に置かれている。

1月下旬の東北新人戦は準決勝で尚志に敗北。延長戦までもつれた試合を1-2で落とし、2年ぶりの優勝を逃した。以降は雪の青森で例年通り、雪中サッカーなどで体力強化を進め、尻上がりに状態を上げていく算段を立てていた。

だからこそ、今回のサニックス杯では青森山田らしい“ゴールを隠す守備”と“一本中の一本を決め切る強さ”を示したかった。だが――。

結果は16チーム中7位。「この大会には優勝がしたくてきた」という正木監督の言葉とは裏腹に、4チームで争われたグループステージは2勝(うちPK勝が1つ)1敗の2位でタイトルの可能性が潰えて、5位~8位トーナメントに挑む形になった。

「(予選で対戦した)ガンバ大阪ユースとの試合もそうだけど、決め切る、守り切るところが一歩足りていなかった感じがする。内容は悪くないけど、勝てなかったというゲームが一番こちらとしては厳しい。内容が悪くてもいいからある程度、勝ち切って、どんどんチーム力を上げていく流れを作ってほしいので」

新人戦の時期と比べれば、チームは格段にレベルアップしている。球際で戦う姿勢、ゴールを守り抜く力や点を奪い切る力は高まってきた。しかし、小さな差が最終的には大きな歪みに。1位通過を賭けて臨んだG大阪ユースとのグループステージ最終戦は0-4の大敗を喫するなど、“らしくない”結果に終わった。

選手たちも危機感を覚えていたが、そうした流れは簡単には断ち切れない。

迎えた5位~8位トーナメントの1回戦。同じプレミアリーグ勢のサガン鳥栖U-18と対戦したが、試合前に指揮官から雷が落とされた。整列が終わり、円陣を組むタイミングの時だ。鳥栖の選手たちは自陣の中央で輪になっていたのだが、青森山田の選手たちはベンチ前に集められていた。先発メンバーだけではなく、控えメンバーも一緒になって正木監督の周りに並ぶと、厳しい言葉が掛けられた。

「お前たち、こんなアップで試合の入りから100パーセントでいけるの?」

いった何が起こっていたのか。正木監督は言う。

「鳥栖戦はウォーミングアップの時点から全然ダメ。前日のゲームでガンバ大阪に負けたことで目標設定が優勝から変わり、別のところに向かう必要が出た。でも、やり切れていなかったし、準備の段階で(ちゃんとできていれば)あんなことはしない。なので、試合前に指示は出さず、心の部分だけを解いた」

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勝負は細部に宿る。選手たちは決して手を抜いたりしていたわけではないだろう。しかし、日本一を目ざす集団として、指揮官は物足りなさを感じた。だからこそ、厳しい言葉を投げかけたのだ。

「やれることを1つずつクリアしていかないと、適当なチームになってしまう。シーズンが始まってから『なんでこんなこと言われてるの?』というようなチームではダメ。プレミアリーグは開幕から全力でいかないといけないし、今はシーズン中に言いたくないこと、シーズン中に持ち越したくないことを伝えている」

準備の段階で相手に遅れを取った結果、試合は0-1の惜敗。前半終盤にリードを許してから猛反撃を開始し、後半の終盤はロングスローとFKやCKから何度も決定機を作ったが、最後まで決め切れなかった。

試合を振り返り、昨季からのレギュラーでキャプテンマークを巻いた右SB小沼蒼珠(2年)はこう話す。

「いくら気合を入れて臨んでも、サッカーはサッカー。1本中の1本を決め切れないと、やっぱり勝てない。ガンバ大阪戦も含めて、簡単には勝てないことが分かった2試合でした」

大会ラストマッチとなった佐賀東との7位決定戦は終盤に逆転したものの、終了間際に失点。2-2でPK戦にもつれ、なんとか勝利を手にしたが、例年のような勝負強さはまたしても発揮できなかった。

“心技体”の技と体はここからいくらでも伸ばせる。しかし、それは“心”があってこそ。開幕前の時期にどれだけメンタリティを作り込めるか。

「自分たちがやるべきことを信じて、しっかり積み上げていきたい」という小沼の言葉通り、今は目の前のことを必死にクリアしていくしかない。もがき続ける“王者”は、青森山田らしさを取り戻すために今日もグラウンドに立つ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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