「本気で描けば絶対に面白いものになる」 大人気漫画「黒執事」だからこそ描けたクリケット 作者に聞く魅力、裏話

© Yana Toboso/SQUARE ENIX,Project Black Butler

 大人気ロングセラー漫画「黒執事」の6作目となるアニメ「寄宿学校編」が4月13日から放映開始となる。本作では、クリケットシーンが見どころの一つとなっており、栃木県佐野市に本拠地を置く日本クリケット協会が原作、アニメ通じて監修に携わった。今回は特別に、原作者の枢(とぼそ)やな先生への独占インタビューが実現。枢先生に作品やクリケットの魅力、佐野市内でのエピソードなどを聞いた。

 

 -ファンにとっても待望の寄宿学校編アニメ化です。枢先生がアニメ化の話を聞いたときの感想を教えてください。

 「正直、うれしさよりも感謝と驚きが大きかったです。アニメというのは作家が『やりましょう!』と言って実現できるものではなく、ファンの皆さまの応援と、さまざまな企業のお力あってはじめて実現するものですので」

 -アニメ化で期待している場面、部分は何ですか。

 「やはりクリケットのシーンです。漫画では表現できなかった動きや音、キャラクターの息遣いまで全て表現してもらえますから」

 -寄宿学校編でお気に入りのシーンは?

 「全編通して楽しく描きましたが、特にクリケットでキャラクターが必殺技を繰り出すシーンは思い入れが深いです。『黒執事』でこんなシーンは二度とやれないだろうと思って全力で楽しんで描きました」

 -クリケットシーンで特に注目してほしい場面は?

 「日本クリケット協会(事務局長)の宮地直樹(みやぢなおき)さんのご協力を得て描いた『1880年当時のルール』にのっとったゲーム運びでしょうか。伝説的選手、歴史的試合などのお話も詳しく教えていただき、それらが漫画にふんだんに盛り込まれています」

 「特に、現代では反則になっている投法やフォーメーションなどは19世紀を舞台とした『黒執事』だからこそ描けたシーンだと思うので、ぜひクリケットに詳しい方にも見ていただきたいです」

 -作品にクリケットを登場させようと思ったきっかけや経緯を教えてください。

 「前々から寄宿学校をモチーフとした章を描きたいと考えていたんです。資料を読んだり、英国文化アドバイザーの村上(むらかみ)リコさんにお話を伺ったりするうちに、寄宿学校とクリケットは切っても切り離せない関係だと知りました」

 「クリケットは日本国内ではまだ認知度が低く難しい挑戦になると思いましたが、本気で描けば絶対に面白いものになると確信して執筆に挑みました」

 -枢先生の思うクリケットの魅力は何ですか。

 「初心者でもプレイ初日から楽しめる間口の広さは、クリケットの魅力のひとつだと思います」

 -実際にクリケットをプレイしたこともあると伺いました。

 「クリケットを体験したことがなかったワタシと担当編集は、まず東京都内の某小学校で開催されていたクリケット教室に参加し、4、5歳・小学校高学年くらいのお子さんと一緒にプレイしたんです」

 「もちろん公式試合のルールとは違いますが、運動不足の30代でも子どもたちといっしょに数時間プレイを楽しむことができました。『紳士のスポーツ』と呼ばれるだけあり、講師の方も参加者の皆さんも非常に優しく、とても楽しくプレイさせていただけたのが印象深かったです」

 -クリケットを描く上で難しかったこと、こだわったところはどこですか。

 「自分は過去にスポーツ漫画を描いたことがなかったうえに、当時はクリケット主題の漫画は日本に皆無。さらに『黒執事』読者に物語としても楽しんでもらわなければならない、と課題が山積みでした」

 「試合と物語がシンクロし、一緒に進行していかなければいけない。『弱小主人公チームを逆転優勝させる』……王道ですが、こんなに難しいものかとうなりました。当時は毎日得点を計算するための電卓と、クリケットのルールブックにかじりつきながら仕事していましたね」

 -日本クリケット協会とのやりとりで覚えているエピソードを教えてください。

 「事務局長の宮地さんが『クリケットはなにより紳士的なプレイこそが大切』と説明してくださったのに、ワタシの質問が『こういったひきょうなプレイは反則をとられますか?』ばかりだったことです。ですが『そんなひきょうなプレイ、考えたこともなかった』と言いつつも、『黒執事』のために親身に相談にのってくださり、ルールの抜け穴を考えてくださったことには本当に感謝しています」

 -監修した宮地さんにメッセージがありましたら教えてください。

 「宮地さんのご協力がなければ、『寄宿学校編』は完成しませんでした。ミュージカル化に続き、ついにアニメ化。クリケット協会の皆さんにも楽しんでいただけたらうれしいです。日本でもクリケットがもっともっと盛り上がるよう、応援しています!」

 -佐野市へ遠征取材に行った際の感想やエピソードはありますか。

 「実は帰路の途中で迷子になってしまったんです(笑)そうしたら、すれ違った住人の方がわざわざ道を戻ってきて『もしかして迷ってる?』と心配して声をかけてくださって。温かい街だなと思いました。あと、マスコットキャラクターのさのまるくんがとてもかわいいです」

 -ファンの皆さんに向けてのコメントをお願いします。

 「いつも『黒執事』を応援してくださりありがとうございます。ついに、クリケット編ともよばれている『寄宿学校編』がアニメになります。原作、アニメ、併せてお楽しみいただければうれしいです!」

◆枢やな先生プロフィル◆

 漫画家。2004年、月刊「Gファンタジー」(スクウェア・エニックス)誌にて読み切り『9th』でデビュー。2005年に同誌で『RustBlaster』を初連載。2006年から現在まで『黒執事』を連載中。『黒執事』は単行本全世界累計3500万部を突破。アニメ、ミュージカル、実写映画化され世界中で人気を博している。4月26日にコミック最新34巻が発売予定。

◆アニメ「黒執事 寄宿学校編」情報(アニプレックス提供)◆

【放送情報】
2024年4月13日(土)より各局にて放送開始
TOKYO MX、BS11、群馬テレビ、とちぎテレビ:4月13日(土)23:30~
MBS:4月13日(土)27:38~

※放送日時は編成の都合等により変更となる場合がございます。予めご了承下さい。

【STAFF】
原作:枢やな(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)/監督:岡田堅二朗/シリーズ構成:吉野弘幸/キャラクターデザイン:清水祐実/音楽:川﨑 龍/制作:CloverWorks

【CAST】

セバスチャン・ミカエリス:小野大輔/シエル・ファントムハイヴ:坂本真綾
エドガー・レドモンド:渡部俊樹/ロレンス・ブルーアー:榎木淳弥/ハーマン・グリーンヒル:武内駿輔/グレゴリー・バイオレット:橘 龍丸

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