尊富士優勝、信じてる 青森県五所川原市のPV会場 母・桃子さん悲痛「けがが心配」

尊富士が朝乃山に敗れ、ため息に包まれる五所川原市役所本庁舎のPV会場=23日午後5時20分ごろ

 大相撲の尊富士が春場所の優勝を懸けて臨んだ23日の朝乃山戦。大勢の市民が集まった地元・青森県五所川原市のパブリックビューイング(PV)会場は、尊富士が寄り切りで敗れた瞬間、悲鳴とため息に包まれた。足を痛め、車椅子に乗って花道を引き揚げる尊富士の姿がスクリーンに映し出されると、家族や市民は心配そうに見つめ、「明日また土俵に立ってくれたら」「優勝してくれると信じている」と祈るように語った。

 市役所本庁舎の会場には市民ら約300人が詰めかけ、「尊富士」と染め抜かれた手ぬぐいを広げたり、手を握りしめたりして、優勝決定の瞬間を待った。

 駆けつけた祖父母ら親族も、祈るような表情で見守り、母・石岡桃子さん(47)は何度も深呼吸をして取組を待った。しかし、市民の大声援もむなしく、尊富士は土俵の外へ。足を引きずる様子を見た桃子さんは「いや」「いや」と何度もつぶやき、息子のしこ名が書かれた手ぬぐいで顔を覆った。

 PV終了後、桃子さんは尊富士の学生時代のけがが頭をよぎった-とし、「明日というより、けがが心配。これからの相撲にどう響くか分からない。今すぐ大阪に行きたい」と息子の体を案じた。その上で「祈るしかない。明日また土俵に立ってくれたら」と涙をこらえながら語った。

 本庁舎の会場で応援した同市在住の田中靖さん(64)は「残念だったが、ここまで一気に上がってきた尊富士は素晴らしい。(けがの状態は)分からないが、明日は一生懸命頑張ってほしい」と語り、佐々木孝昌市長は「足を痛めたので非常に心配」と気遣いつつ、「まだ星一つリードだし、千秋楽は何があるか分からない。優勝してくれると信じている」と言葉に力を込めた。

 尊富士の出身地である同市金木町地区の金木総合支所で行われたPVにも約60人が集まった。尊富士が土俵を割ると、「あ~」と残念がる声が響き、直後に「明日だ、明日」という声とともに拍手が起こった。

 最前列で応援していた同地区の長尾真紀子さん(56)は「もし明日出られるなら、みんなが応援しているので頑張ってほしい。地元出身力士としてずっと応援していきたい」と話した。同地区の神政孝さん(80)は「まさか、こうなるとは…。相撲は思った通りにいかないものだ。でも、豊昇龍が負けたので、まだまだ優勝の可能性はある。明日も(PVに)来ます」と千秋楽での優勝決定を願った。

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