青森県鯵ケ沢町の歴史資料、次世代に 2022年大雨被害 文化財レスキュー、修復作業終える

鯵ケ沢町の舞戸正八幡宮所蔵の文書の仕分け作業を行う同町教委の職員ら

 2022年8月の大雨で浸水被害に遭った、青森県鯵ケ沢町の舞戸正八幡宮の文書群約400点が約11カ月に及ぶ修復作業を終え、27日、同神社に引き渡される。地震や水害が相次ぐ近年、歴史資料を修復する「文化財レスキュー」が全国的に注目されており、関係者は万一の際に文化財をいかに次世代に手渡していくのか探っている。

 18日、弘前大学の片岡太郎准教授(文化財科学)と同町教育委員会、弘前市立博物館の職員らが弘大に集まり、修復した文書群の中から後世に伝える価値がある歴史資料を選別する作業を行った。

 文書群の中から、かつて同神社で行われた裸参りの記録や、献上品を寄進した人の名簿などが見つかった。中には、戦時中や終戦直後の政治に関わる資料もあった。仕分け作業をした同博物館の小田桐睦弥(むつみ)学芸員は「神社が地域の中で大きな役割を担ってきたのは事実で、神社の歴史は地域の歴史でもある。文化財レスキューは青森県ではまだ手探り状態だが、資料を次の世代に残すのは大切だ」と話した。

 文化財レスキューは、1995年の阪神大震災を機に重要性が認識された。今年1月1日に発生した能登半島地震でも、能登半島にある貴重な古文書や民具、美術品が被害に遭っており、地域の歴史を伝える資料の保存が課題となっている。

 同町教委とともに文化財レスキューで中心的な役割を担った片岡准教授は「資料の整理や価値判断には専門家同士のネットワークづくりが必要。今回の活動を機に、災害時の文化財救出の体制づくりを進めたい」と話した。

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