3戦連続ドローも開幕から無敗で上位進出。FC大阪は今季のJ3で台風の目になりそうだ

今季からJ2昇格プレーオフが採用され、上位6チームにJ2行きの可能性が生まれた2024年のJ3。門戸が広がったこともあり、多くのクラブのモチベーションが上がっている。

そこで序盤、旋風を巻き起こしているのが、J3参戦2年目のFC大阪だ。

志垣良監督(現山口)が指揮した昨季は11位でフィニッシュしたが、失点数の少なさはリーグ3位の38と堅守をベースとした戦いが光った。

迎えた今季、昨季途中まで鹿児島ユナイテッドFCの指揮を執っていた大嶽直人監督が就任。前任者の土台を活かしつつ、「縦のスイッチを入れて、攻撃のアクションを数多く起こす」というテーマを設定し、昨季より進化したサッカーを目ざしているという。

開幕3連勝のあと、2戦連続ドロー。5試合で無敗は1つの成果だろう。とりわけ、J2から降格してきたツェーゲン金沢に6-2で大勝した3月9日の第3節は見る者に驚きを与えた。迎えた23日の6節・松本山雅FC戦は3試合ぶりの白星を手にすべく、真っ向勝負に挑んだ。

天気はあいにくの雨。本拠地・花園ラグビー場のピッチは水たまりができるほどの劣悪な状態。となれば、つなぐスタイルを志向する山雅よりも、堅守から縦への推進力を押し出すFC大阪の方に分があった。山雅のキャプテン菊井悠介も「この環境は相手の土俵だ」と厳しさを感じたという。

実際、前半からFC大阪の方が確実にセカンドボールを拾って前線へ長いボールを蹴り出し、フィニッシュまで持ち込んでいた。今季初先発の大卒ルーキーFW西村真祈も「僕らはしっかりハードワークして、球際で負けない、90分走り切るっていうところをベースにやっているので、そこに関してはしっかりやれているのかなと思います」と自信をのぞかせた。

前半のシュート数は山雅の1本に対して、FC大阪は8本。右SB美馬和也が放った24分の決定的なミドルが決まっていたら、リードを得て前半を終えていたはずだ。スコアレスで試合を折り返すことになったが、前半終了間際に山雅の佐相壱明が退場。後半のFC大阪は数的優位の状況で戦うことができた。

「1人少なくても同じサッカーができるようにしないといけないし、相手が少ない方がスペースがなくなったりするので、むしろ難しい。松本もカウンターがあるので、しっかりしたリスク管理を選手たちに指示しました」

かつて日本代表で森保一監督とともにドーハの悲劇を経験している指揮官は、「一瞬の怖さ」を熟知している。だからこそ、細かい部分の意識付けにはより強くこだわっているのだろう。

FC大阪は後半も相手を上回るシュートを放ち、積極的に攻め込んだ。しかし、荒れたピッチに誘発されたかのように警告9枚が飛び交い、彼らの方にも退場者が出る乱戦に。結局、0-0で終了。FC大阪は3試合連続スコアレスドローを余儀なくされた。

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「我々は守備のところをハイラインにして、昨年より10メートル前で戦うことにトライしている。それが今のところ高い意識でやれていると思います。ただ、クリーンシートと同様に、なかなか得点が奪えていない。

最後の質やペナルティエリアに侵入してシュートに行くところは課題ですし、これからも取り組んでいかないといけない。若いチームなので、成長できる部分もたくさんあると思います」と、大嶽監督はアグレッシブさを前面に押し出した戦いを前向きに評していた。

確かにこの堅守速攻スタイルを突き詰めていけば、上のカテゴリーに近づいていきそうな気配はある。今季J1初昇格のFC町田ゼルビアも、昨季J3優勝でJ2に返り咲いた愛媛FCも「負けない戦い」を重視していた。

やはり堅守をベースにするチームの方がいち早く結果を出せるのは事実。そういう観点で見ても、FC大阪はJ2を狙えるポテンシャルがありそうだ。

加えて言うと、J1・J2クラブから声のかからなかった関西の有望選手が何人か加入していて、選手層も想像以上に厚い。そこも1つのアドバンテージと言っていい。

昨季はJ2ライセンスを取れなかったが、問題視されたU-15チームも活動を開始。今季中にライセンスが認められる見通しで、それもクラブ全体の大きな活力になっているはずだ。

「ただ、(3月13日のルヴァンカップで)いわきFCとやった時に、ハードワークや球際の部分を見せつけられたので、もっと高めていかないとダメだと痛感しました。いわきが僕らのモデルというわけではないけど、近いサッカーではあると思うので、自分たちもやることを突き詰めて、J3を圧倒できるくらいのパフォーマンスを出していかないといけないと思っています」

西村は強調したが、選手たちからもFC大阪のスタイルを迷うことなく突き詰めていこうという気概が感じられる。これはポジティブな要素だ。

目下、6試合を終えて暫定2位につけている彼らからは、「今季J3の台風の目」になりそうな予感も漂っている。勢いに乗るフレッシュな集団の今後の動向が非常に興味深い。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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