「ちょっと気になる金 (きん) 投資【後編】」お金の教科書Vol.40 #増やす

ちょっと気になる金(きん)投資【後編】

高山一恵(たかやま・かずえ)さん ファイナンシャルプランナー。Money&You取締役。Webメディア「FP Cafe」「Mocha」の運営ほか、多くの働く女性のマネーのお悩みを解決、サポート。頼藤太希さんとの共著に『はじめての資産運用』(宝島社)がある。

貯蓄未知子(ちょちく・みちこ/34歳・会社員) 都内の賃貸で一人暮らし中。毎月の貯蓄は財形2万円+口座に残った分のみ。奨学金は完済。昨冬のボーナスが想像以上に少なく、今年は投資で増やしたいと目論んでいるところ。

純金積立はジュエリーにするという選択肢も。

未知子:前回は金投資の主な商品までを教えてもらいました。その中で私がやってみたいと思ったのは、現物購入と純金積立です。

高山:なぜその2つ?

未知子:まず純金積立は毎月、一定の金額でコツコツ購入できるというのが堅実派の私には向いているな、と。月1000円からできるというのも気軽に始められる感じがあります。

高山:確かに純金積立は、将来的に現金に換金するのではなく、ジュエリーにするという方法もありますからね。そういう楽しみがあると、続けやすいと思います。

未知子:そうなんです! ちょっと検索してみたんですが、某有名貴金属会社の場合、現金化するよりもお得なケースもあるみたいで。

高山:等価交換の場合、店頭小売価格が適用されるので、買い取り価格との差額分がお得になる、というやつですね。

未知子:そうなんです。ラグジュアリーブランドの人気ジュエリーの価格がどんどん上がっているのを横目に見ているうちに、ジュエリーを購入する際はもう“ブランドありき”で選ぶより、“金ありき”で購入した方がベターな気がしてきたんです。

高山:だいぶ現実的ですね(笑)。ただ、人気ブランドのジュエリーは“ブランドネーム”がリセールバリューであって、金という視点ではないので一概に比較はできません。それでも、“換金”という視点で考えたら、その発想はアリだと思います。

未知子:とはいえ、換金という視点だと、やっぱり現物購入ですよね~。どこに保管しよう(笑)。

どんな投資にもデメリットはある。

高山:ひと昔前は“タンス貯金”といって、ある程度まとまった現金や金を自宅で保管している人は多かった。でも昨今、物騒なニュースが続いているので、自宅での保管はリスクがありますね。

未知子:“あの家はお金を持っている”という情報がどこからか出回って、強盗殺人に発展したケース、ありましたね。ま、私レベルでは問題ないと思いますが(苦笑)。

高山:いえいえ、その油断が危ない。情報がどこから漏れるかわからない今、現物購入の場合は然るべき場所で保管してもらうのが、一番安全です。

未知子:でもその保管にまたお金がかかりますよ…ね?

高山:はい。金投資にはメリットだけでなく、デメリットだって当然あります。そこをしっかり押さえた上で始めましょうね。

始める前に知っておきたい、金投資のメリット・デメリット

【メリット】
・価値がゼロにならない
株や債券のように、会社が倒産したら全てが水の泡ということにならないのが現物資産のメリット。それゆえ、安全かつ信頼性が高い。同じ現物資産の不動産より手軽に始められるのも。

・インフレ・デフレに強い
リーマンショックが起きた2008年は世界的なデフレとなったが、金の価格は高騰。また、貨幣価値が下がるインフレ時でも現物としての価値が揺らがないぶん、金は強いといわれている。

・世界共通の価値
金は埋蔵量が有限であり、希少性が高い鉱物。世界全体でその価値が認められており、取引する際のレートもドルが基軸。世界情勢が不安定なほど、“有事の金”として大勢が選ぶ傾向に。

【デメリット】
・利息や配当がない
銀行預金は利息、株式は配当金や株主優待が得られるが、金は所有するだけの資産。利益を得られるのは売却時のみで、ジュエリーにする際もその時の金の価値と等価交換されるのみ。

・現物は管理が大変
盗難や紛失のリスクがつきまとうのが現物資産。自宅で保管するなら金庫、または貸金庫や販売業者の預かりサービスを利用すれば安心だが、一定金額の管理費用がかかってくる。

・手数料が高め
まとまった量の購入は手数料なし、というケースが多いが、少量の場合は「バーチャージ」という手数料が約4000円~1万5000円かかる。また、売却時もその利益に対して課税される。

次回は、2392号(4月3日発売)掲載予定です!

※『anan』2024年3月27日号より。イラスト・小迎裕美子 取材、文・一寸木芳枝

(by anan編集部)

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