「貯金もままならない」年収150万円2人の子ありシングルマザーはどんな支援が受けられる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。 今回の相談者は1年前に離婚したシングルマザーの方。2人の子どもがいて年収は150万円で契約社員。貯金もままならない状況だといいますが、どのような支援を受けられるでしょうか。FPの宮里恵子氏がお答えします。


1年前に離婚。長男が小学校に入学したため、契約社員になって仕事をしています。これから長女に塾や習い事もさせてあげたいと思いますが、貯蓄もままならない状況で不安です。

【相談者プロフィール】

・母:35歳、契約社員、年収150万円

・長女10歳、長男7歳

【その他収入(月額)】

・児童手当2万円

・養育費7万円

【毎月の支出の内訳】

・家賃:8万5,000円

・食費:5万円

・電気:・インターネット・携帯代4万円

・水道・ガス:8,500円

・雑費:1万円

・共済保険料:(生命保険):4,200円

・学校教育費:3,400円(2人分)

宮里:家計を拝見いたしました。現在は、契約社員としての手取り収入とその他の収入の合算に対して支出がほぼ同額で貯蓄ができないのが悩みのようですね。ここまでよくがんばってこられたと思います。

ひとり親家庭が受けられる支援制度

ひとり親家庭の支援制度は、概ね表のようになります。国の制度と各自治体の制度があり、所得制限や子どもの年齢制限等がある場合があります。児童手当は2024年10月から所得制限がなくなり、支給期間を「高校生年代まで」となる予定です。

相談者の資料には記載がありませんでしたが、児童扶養手当の受給対象と思われます。前年または前々年の所得、扶養家族の数によって全部支給か一部支給かを判断され、算定する所得金額には受け取っている養育費の80%の額が加算されます。相談者が全部支給されているとすると5万4000円程度となります(参考:こども家庭庁「児童扶養手当について」より)。

学校に納める金額は2人で月3,400円程度ですね。小学校・中学校は義務教育期間なので、すべての子どもには教育を受ける権利が保障されています。就学援助制度の援助対象の家庭は学用品費や給食費、修学旅行費等の援助を受けられる国の仕組みがあります。長女が中学生になったら、就学援助金額も変化しますので、今後は準備が必要です。

医療費に関しては、所得制限はありますが、ひとり親家庭等医療費助成制度によって、親も子も医療費が助成されます。親である相談者の医療費も助成されるというのは心強いですね。もし相談者の収入が上がり所得制限以上になったとしても、各自治体が実施している小児医療費助成制度により子どもの医療費はある程度助成されます。

高校・大学の教育費はどのような支援がある?

高等学校については、すでに公立高校は授業料の実質無償化が実施されており、2020年度からは年収制限はありますが、私立高校も授業料の支援額が引き上げられました。各都道府県等の地方自治体が独自に支援制度を設けている場合もあります。

大学等についても2020年度から「高等教育の修学支援新制度」によって、授業料の減免や給付型奨学金の拡充が始まり、対象となる世帯の条件も年々見直されてきています。

こども家庭庁が発足し、ひとり親家庭等に対する支援として「子育て・生活支援策」「就業支援策」「養育費の確保策」「経済的支援策」の4本柱が挙げられています。その中には子どもの学習支援の拡充が盛り込まれています。今後は、低額または補助などで子どもが通える塾が増えることを期待したいですね。

児童扶養手当を貯蓄に回そう

ここまで見てきたように、ひとり親世帯だけでなく、家庭の経済状況によって、子どもが進学できるチャンスが失われないような制度が、従来に比べれば整ってきていると言えます。とはいえまだまだ充分ではありません。

相談者の家計を拝見すると、毎月の支出は、ほぼ固定費用と思われます。これ以上節約して家族の健康を維持できなければ本末転倒です。児童扶養手当を受給していれば、それを貯蓄や緊急時の支出に充てるといいでしょう。インターネット・携帯電話代の部分で格安な事業者やプランに変更すると、少しでも費用を節約できる可能性がありそうです。

子どもの成長とともに今後支出は増える一方ですね。すぐにではなくても収入アップのために情報収集をしておきましょう。

ステップアップや資格取得のための支援を活用

2023年に新設された、こども家庭庁では「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業」として、ひとり親の就労のステップアップや資格取得のための支援を実施しています(制度を設けている自治体のみ)。

具体的には「自立支援教育訓練給付金」と「高等職業訓練促進給付金等事業」で、いずれも児童扶養手当の支給を受けているか又は同等の所得水準にあることが対象の条件です。

収入が増えると児童扶養手当が減額になりますが、現在の仕事を続けながら、講座を受講したりして、ステップアップを目指しましょう。将来を見据えれば児童扶養手当を当てにせず、収入を増やすことが望ましいと思います。

離婚後は契約者を自分に変更!

なお、離婚に伴い、子どもの学資保険や携帯電話の契約者が元夫になっていないかを確認しておきましょう。例えば、学資保険の保険料を元夫に支払ってもらう約束だとしても、契約者を元夫のままにしておくと、満期時に保険金を受け取るために元夫に連絡しなければならず、余計な手間がかかったり、将来勝手に解約されて解約返戻金を受け取られてしまったりということも起こり得ます。携帯電話も家族割などのために家族分すべて元夫名義になっていないでしょうか。その場合、今後プラン変更や解約の手続きの都度元夫に連絡しなければならなくなってしまいます。契約内容の変更や解約は契約者しかできないのが原則です。今のうちに自分に変更しておきましょう。

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