『私の夫と結婚して』でブレイク!  チャンスを必ずモノにするナ・イヌのひたむきさ

ナ・イヌが、頼り甲斐のある一途な男性ユ・ジヒョク役を演じたAmazon Original『私の夫と結婚して』は大いに注目を集めた。Prime Videoの日本ランキング1位を獲得したほか、グローバルヒットした同作で、ナ・イヌは『トキメキ☆成均館スキャンダル』や『キム秘書はいったい、なぜ?』などで人気のラブコメ女王のひとり、パク・ミニョン演じる主人公カン・ジウォンの会社の上司であり、物語の鍵を握る相手役を好演。

同作は、末期がんを患うジウォン(パク・ミニョン)が、夫パク・ミンファン(イ・イギョン)と親友チョン・スミン(ソン・ハユン)の不倫現場を目撃し、絶望したあげく、殺されるという衝撃的なシーンから始まる。そして突然10年前の過去へとタイムリープし、気付くと会社にいるジウォン。目の前には、10年後、自分を殺す夫となるミンファンが笑顔で立っていて思わず絶叫。一体、何が起こっているのかパニックになりながらも、夫と親友に復讐して運命を変えようと決意する、ロマンス復讐ストーリーだ。

“2度目の人生”では、ナ・イヌ演じる会社の上司ジヒョクが、ジウォンを何かと助けて守ろうとする。物語が進むにつれて、そもそも2人は以前から縁があり、さらには亡くなったジウォンの父も関係していることが明らかになってくるのだが、ハラハラさせるストーリー展開は毎話どうなっていくのかと見入ったし、188cmという高身長で甘い眼差しを向けるナ・イヌと華奢なパク・ミニョンのツーショットは美しかった。

最近はソンフンとチョン・ユミンによる『完璧な結婚のお手本』でも夫と家族に裏切られたヒロインがこの世を去った後、過去に戻り復讐を果たすドラマがあったり、12回の死と生を繰り返し12通りの人生を経験して生を見つめ直す、ソ・イングクによる『もうすぐ死にます』があったり。前者は復讐劇、後者はスリラーでもあり異なるものの、小説や漫画を原作としたタイムリープや転生ものは、映像化でさらに臨場感と迫力のある作品に仕上がるため良作が多い。

『私の夫と結婚して』で日本でも話題となっているナ・イヌは、1994年9月17日生まれの現在、29歳。9歳の時にカナダへ渡り、12歳で韓国へ戻った後、JYPエンターテインメントの練習生として歌手デビューを目指すも、芽が出ない日々を送る。将来の道に悩みながらも、俳優として活動することを決意し、CUBEエンターテインメントで俳優として活動開始。2013年にミュージカル『僕らのイケメン青果店』でデビューを果たした。

アイドルグループの一員としてではなく、俳優として花開いたナ・イヌ。彼の出演作品で印象的なものといえば、2020年の不思議な屋台の女将を中心に繰り広げられるファンタジー『サンガプ屋台』の徹底した悪役ぶりや、魂が入れ替わるラブコメディ時代劇『哲仁王后~俺がクイーン!?~』の優しさと男気にあふれた姿だろう。それぞれナ・イヌが持つ芝居へのひたむきさがうまく作用し、存在感を見せつけることができた。

そんな勢いを増すナ・イヌの状況をさらに後押ししたのは、2021年の『王女ピョンガン 月が浮かぶ川』。三国時代の高句麗で、国を守るために戦う主人公の王女ピョンガンを愛し、彼女を守るために武将となるオン・ダル役を熱演してブレイクしたのだ。当初、オン・ダル役はジスが決定しており、大部分の制作が終了していたなかでスキャンダルが発覚し、ドラマを降板。急きょ白羽の矢が立ったナ・イヌが主演俳優へと抜擢され、撮影し直し、見事に代役をまっとうした。この作品で彼は第35回KBS演技大賞新人俳優賞、ベストカップル賞を受賞している。

2022年のファンタジーラブストーリー『ジンクスの恋人』では、少女時代のソヒョンと共演し、その運命の王子様ぶりに多くの女性の心をときめかせ、2023年のミステリーサスペンス『ずっとあなたを待っていました』では、初の熱血漢の刑事役を披露。時代劇「哲仁王后」のペ・ジョンオクと現代劇でも再共演となり、また違った新鮮さも楽しめる。

一方、映画では、2015年に2PM・ジュノの主演作『二十歳』でスクリーンデビュー。ジュノ演じる主人公の弟役として登場(2019年に改名する前の本名「ナ・ジョンチャン」として出演)。近年では、2024年2月に公開されたヨ・ジング×チョ・イヒョンのダブル主演作『同感~時が交差する初恋~』に、チョ・イヒョン演じるムニの幼なじみ役として出演している。2022年からは、バラエティ番組『1泊2日 シーズン4』にもレギュラー出演し、飾らないのびのびとした姿を見せた。

そして2024年、『私の夫と結婚して』が世界配信され注目を浴びるなか、2012年から所属していたCUBEエンターテインメントを離れた、ナ・イヌ。ブレイクするまで下積みを経験しながらも、訪れたチャンスを必ずモノにしてきた努力と運の強さがある。4月には初来日ファンミーティングの開催も予定されているが、まだ兵役に就いていないため、その後はタイミングを見て入隊となるのだろうか。または、国内外での知名度をグンと高めたいま、一度クールダウンして、新しい事務所で心機一転、活動をスタートするのか。今後、三十代となるナ・イヌが、役者としてどんな姿を見せるようになるのか、心待ちにしておこう。
(文=かわむらあみり)

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