遺伝やがんの正しい知識を 香川大助教・十川さん 岡山で講座

 岡山市在住で香川大病院臨床遺伝ゲノム診療科特命助教の十川麗美さん(31)が、遺伝やがんについて正しい知識を伝える講座を岡山県内で開いている。遺伝医療を必要とする人たちを支援する「認定遺伝カウンセラー」の資格を持ち、家族の病歴や遺伝子検査を病気の早期発見や効率的な治療につなげる大切さを伝えている。

 講座は「Genetic(ジェネティック) Cafe(カフェ)」。DNAやゲノムといった基本的な用語を説明。がんなどの病気はどの程度遺伝する可能性があるかや、遺伝子の特徴によって治療薬が異なるなど医療の発展で近年分かってきたことを解説する。遺伝子検査によって自身の特性を知る大切さや、配偶者や子どもに結果を伝える不安をカウンセリングで軽減するサポートをしていることを伝えている。

 2019年に始め、県内の企業や学校などでこれまにで約30回開催。千人以上が受講している。昨年9月まで岡山大病院(岡山市)で遺伝カウンセラーとして勤務していた十川さんが、診療の中で遺伝子検査に不安を抱える患者と出会ったり、カウンセラーの存在が知られていないと感じたりしたことから立ち上げた。

 青陵高(倉敷市羽島)で2月10日に開いた講座には1~3年生15人が参加。がん細胞が生まれる要因を聞き、模型を使って遺伝子の構造に理解を深めていた。2年の女子生徒(17)は「遺伝について将来の人生設計を考える上で重要だと分かった。家族にも学んだことを伝えたい」と話した。

 講座が評価され十川さんは、研究者らでつくる日本サイエンスコミュニケーション協会の23年の奨励賞を受賞した。「講座を活用して、遺伝カウンセリングという場があることを知ってもらい、遺伝について理解を深めて健康管理やがん予防につなげてほしい」と呼びかけている。

 専用ホームページから講座の依頼ができる。

 認定遺伝カウンセラー 日本遺伝カウンセリング学会と日本人類遺伝学会が共同で認定する資格。DNA解析やゲノム情報に基づいた医療などの基本的な知識を持ち、手術や治療方法に不安を持つがん患者や家族らの心情に寄り添ってアドバイスし、意思決定を支援する。2005年に始まり、23年12月時点で全国に389人、岡山県内で7人が認定されている。

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