尊富士(青森・五所川原市出身)、負傷押し110年ぶり新入幕V 初土俵から所要10場所、史上最速

優勝パレードで旗手の錦富士(左)とともに沿道の声援に応える尊富士=24日午後6時40分、大阪市

 大相撲春場所(エディオンアリーナ大阪)千秋楽の24日、青森県五所川原市出身の新入幕・尊富士(24)=東前頭17枚目、本名・石岡弥輝也(みきや)、伊勢ケ浜部屋=が西前頭6枚目の豪ノ山を押し倒しで下して13勝2敗とし、初優勝を決めた。新入幕力士が頂点に立つのは、優勝制度が確立した1909(明治42)年夏場所以降では14(大正3)年夏場所の両國(9勝1休)以来、110年ぶりの快挙。初土俵から所要10場所での優勝は、史上最速となる。

 県勢の優勝は97年九州場所の大関貴ノ浪(三沢市出身)以来27年ぶり11人目となる。都道府県別では北海道120回、東京都48回に次いで3位の38回目(モンゴルは101回)。

 日本相撲協会によると、大銀杏(おおいちょう)を結えない力士の優勝は初めて。平幕優勝は2022年九州場所の阿炎以来37度目。尊富士は殊勲、敢闘、技能の三賞を全て獲得した。

 前日の取組で右足首を負傷しながら強行出場し、優勝を決めた尊富士は「精神力だけで取った。この先終わってもいいと思った。(休場したら)一生悔いが残ると思ったので土俵に上がった」と語った。

 尊富士は幕内全42力士平均の体重を20キロ近く下回る軽量ながら、持ち前の低く、速く、鋭い出足を生かした突き押しに加え、差し身のうまさも発揮し白星を重ねた。中日に幕内第1号で勝ち越しを決めると、役力士初挑戦となった9日目に小結阿炎を下した。

 10日目に「令和のライバル対決」と注目された23歳・大の里に圧勝するとさらに勢いに乗り、11日目に今場所新大関に昇進した琴ノ若も下し、昭和の大横綱大鵬が1960(昭和35)年初場所に打ち立てた、新入幕の初日から11連勝の最長記録に64年ぶりに並んだ。

 尊富士は新十両の先場所優勝。新十両の初日から9連勝の最長タイを記録した。初土俵から所要9場所での新入幕は、年6場所制となった58(昭和33)年以降、最速タイ(幕下付け出し除く)。

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