死刑制度の在り方議論で懇話会 法曹・政界関係者ら、今秋にも提言 世界196カ国の7割超が廃止、座長「日本は説明責任ある」

日弁連の呼びかけで発足した死刑制度について考える懇話会=2月29日、東京・霞が関

 日本の死刑制度の在り方を議論する懇話会が発足した。日本弁護士連合会の呼びかけで学識経験者や法曹関係者、国会議員らが参加。国際情勢や制度の目的など複数の論点でヒアリングなどを実施し、今秋にも提言を取りまとめる予定だ。

 前法制審議会会長で中央大学大学院の井田良教授(刑法)が座長を務める。16人の委員には法曹界から林真琴元検事総長や中本和洋元日弁連会長ら、政界から自民党の平沢勝栄衆院議員、立憲民主党の西村智奈美衆院議員らが入った。

 初会合は2月29日にあり、3月11日の2回目では、冤罪や誤判をテーマに取り上げた。神奈川県座間市の9人殺害事件などを担当した村井宏彰弁護士は、国が死刑制度に関する情報を徹底的に秘匿している点を問題視。「裁判官や裁判員が情報不足のまま議論するのはおかしい」と述べた。

 鹿児島地裁では2009年の裁判員制度導入以降、検察側が死刑を求刑した事件が3例ある。18年に日置市東市来町湯田の民家で5人が殺害された事件は、同地裁の裁判員裁判で被告に初めて死刑が言い渡され、弁護側が即日控訴した。

 井田氏は「これまで深い議論がされてこなかった。経済協力開発機構(OECD)のほとんどが死刑を廃止し、日本も世界の国々に説明責任を負っている。今の時代状況を踏まえた形で議論したい」と話す。

 懇話会に提出された資料によると、世界196カ国のうち7割超の146カ国が死刑を廃止。先進国グループのOECD加盟38カ国で死刑制度があるのは米国、韓国、日本の3カ国となっている。19年の内閣府世論調査では「死刑もやむを得ない」が80.8%、「廃止すべきである」が9.0%だった。

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