なぜ春は火災が多いの?火災と天気の意外な関係と気をつけたいポイントを気象予報士が解説

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火災が多い季節、と言われたらどの季節を思い浮かべるでしょうか。
火災の起きやすさは気象の要素にかなり左右されるのですが、そこに関係してくるのは、じつは空気の乾燥だけではありません。

今回は、野菜ソムリエ・気象予報士・防災士の資格を持つ植松愛実さんが、火災と天気の関係、そして春にとくに気をつけたいポイントを解説します。

1年でもっとも火災が多いのは

全国で起きる火災の件数が1年でもっとも多くなるのは、3月(2010~2019年の10年間平均、総務省消防庁データ)。
冬のほうが多いイメージがあるかもしれませんが、2番目に多いのも4月で、いずれも春です。

3番目にようやく1月が登場しますが、4番目は5月で、やはり春を中心とした時期に多いということになります。
そのくらい、春は毎年多くの火災が発生している季節なのです。

暖かくて強くて乾いた風

火災が増える原因は乾燥と思われがちですが、じつは乾燥と同じくらい重要な要素が風です。
風は火が燃え広がるのを助長してしまうため。

春はもともと冬と同じくらいか、地域によっては冬よりも乾燥するうえに、全国的に強風が吹きやすい季節なため、必然的に火災が増えるのです。

さらには、春は日本海で低気圧が急発達しやすい傾向にあり、こういうケースでは「フェーン現象」と呼ばれる現象が起きて高温で乾燥した強風が吹くことが多く、一層火災が起きやすい条件がそろってしまうことになります。

山や森に人が入る季節

ひとくちに火災と言っても住宅火災や林野火災、車両火災などがありますが、春はとくに林野火災が増える時期でもあります。
というのも春は、ふだん山や森に入らない人でもキャンプやピクニックで山や森へでかける人が増えるためです。

とくにキャンプでは火を使うことが多いと思いますが、消したと思った焚き火が完全に消えておらず火災につながるケースがあり、場合によっては森だけでなく離れた住宅地にまで飛び火して大規模な火災になってしまうことも。
山や森で火を使うときは、「燃えやすいものに囲まれて火を使っている」と意識して、火の取り扱いに細心の注意を払う必要があります。

火災の危険を知らせる「乾燥注意報」

火災が延焼しやすい気象条件のとき、気象庁からは「乾燥注意報」が発表されます。
何日間にもわたって空気が乾燥していたり、延焼を助長するような強い風が予想されるときに出される注意報で、とくに春は発表回数が増えます。

乾燥注意報が出ると、もちろん肌や喉の乾燥対策に力を入れる目安にもなりますが、「火災に注意しなきゃいけない状況なんだな」と頭の片隅に入れておいてください。

参考データ

総務省消防庁「火災統計」

■執筆/植松愛実…身近な食材でできる時短作り置き料理やパーティー料理、簡単に彩りを増やせる料理のコツや、いざという時に備える災害食まで、「食」に関する情報を発信。また、東北や東海、関西にも住んだ経験から、各地の伝統的な食材にも詳しい。野菜ソムリエ、食育インストラクター、気象予報士など保有資格多数。
編集/サンキュ!編集部

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