東北整備局北上川下流河川ら/吉田川河道掘削の進捗報告、国内初の最新技術活用

宮城県北部を流れ、2019年10月の台風19号で甚大な被害を受けた1級河川・鳴瀬川水系吉田川の河道掘削や護岸工事に国内初を含めた最新技術が使われている。工事を所管する東北地方整備局北上川下流河川事務所、施工7社で構成する「吉田川河道掘削工事協議会」(会長・若生工業)によると、本年度はAIやGNSS(全球測位衛星システム)などの技術を導入。工事用ダンプトラックの渋滞を軽減するなどの成果が上がっている。
22日に宮城県大郷町の町役場で行政区長らに工事の進捗(しんちょく)やICT機器活用などの状況を報告した=写真。23年度は9件の工事が行われた。掘削土量は約40万立方メートルに達したという。工事ではAIカメラでダンプのナンバープレートを読み取って入退場を自動登録。GNSSによるダンプの移動把握と組み合わせ、ルートや台数制限などを事業全体で管理した。AIやGNSSを組み合わせた車両管理は国内初の取り組みだ。
報告を受けた行政区長らは「ダンプによる渋滞をあまり見かけなかった」「工事会社の配慮を感じている」などと述べた。同事務所の間山隆之副所長は「台風19号と同じ規模の洪水でもあふれないよう、河道を広げる掘削が25年度までに完成する」と説明。土砂ダンプの運行管理などにも最新技術を導入しており「24年度以降も地域の理解を得ながら進めたい」と話した。
吉田川は台風19号の襲来時、管理延長32キロのうち約27キロで計画高水位を超えた。堤防決壊1カ所を含む33カ所で越水やいっ水が発生し、流域の約5538ヘクタールが水に漬かり、678戸が浸水被害を受けた。
対策として24年度までに約150万立方メートルの河道掘削や堤防整備(引堤)工事などを計画している。下流側から複数工事を近接施工するため、9件の工事を施工する7社が情報共有などを目的に協議会を設置。メンバーは▽若生工業▽丸本組▽木村土建▽阿部土建▽瀬崎組▽武山興業▽藤山工務店-となっている。
吉田川中流部は河川沿いに生活道路があり集落も点在する。大型ダンプトラックの通行は交通渋滞などで住民の生活に影響を与える可能性があった。同事務所と協議会は工事の影響を最小限にしつつ、円滑な施工を実現するため導入可能な技術を検討した。
熟練監督員の知識や経験則に依存していた領域に最新技術を活用し、着工前に架設計画を見直し場内道路を2車線化するなどした。ダンプの待機時間・台数を減らすことで稼働率を40%高めながら、二酸化炭素(CO2)の排出量を1日当たり50トン削減するなどの効果も生み出した。

© 日刊建設工業新聞社