『ゴジラxコング』に先走り便乗!似非メカニコングも登場『ロード・オブ・モンスターズ 怪獣大決闘』はアサイラムの図太さ弾ける人気シリーズ最新作

『ロード・オブ・モンスターズ 怪獣大決闘』© 2023 Acme Holding Company, LLC.

アサイラムが図太さを発揮した先取り便乗SF大作

このところ『ゴジラvsコング』(2021年)の続編に関するあれこれが話題となっている。この記事の執筆時点では『ゴジラxコング 新たなる帝国』という邦題と、ほかいくつかの断片的な情報しか明かされてはいないが、直近では「ゴジラとコングが並走する」ティザーポスターや予告編の公開を受け、SNSが大いに盛り上がっている。

「今回はきっと<メカニコング(※)>がサプライズ登場するに違いない」などと、参戦キャラクターを予想する怪獣映画ファンのポストも飛び交っており、同作への期待感は高まる一方だ。

※メカニコングとは、日本の特撮映画『キングコングの逆襲』(1967年)に登場する、キングコングを模した造形の巨大ロボット。一部ファンからは、モンスターバースへの参戦を期待する声が上がっている。

そんな中、驚くべきフットワークの軽さで『ゴジラxコング 』最新作に便乗したのが、やはり米国のパチモン映画スタジオ<アサイラム社>。いわゆる“怪獣VS怪獣もの”のアサイラム製パニック映画、『ロード・オブ・モンスターズ』シリーズ(2019年~)の続編を早速撮影すると同時に、モンスターバースに先駆け(?)メカニコングもどきの巨大ロボを劇中堂々登場させるという、マニアックな図太さを敢行。

結果として、「前作では一応巨大チンパンジーだったはずの主役怪獣エイブラハムが、今回の続編でなぜかゴリラになっている」というよくわからない設定の齟齬が生じているが、それはまあどうでもいいことだろう。一応本家モンスターバースでも、登場怪獣のちょっとしたデザイン変更くらいは新作を出すたびに行っているし、幸いゴリラやチンパンジーからこれといった抗議はまだ来ていない。

それはさておき今回は、アサイラム社謹製『ロード・オブ・モンスターズ』シリーズ第3弾、『ロード・オブ・モンスターズ 怪獣大決闘』(2023年)を紹介していこう。

正義のモンキー怪獣、ふたたび起つ

かつて外宇宙物質を取り込み巨大化した類人猿型怪獣エイブラハム。紆余曲折を経て一度は人類の味方となった彼だが、今ではその身を持て余されており、数少ない理解者の一人であるスローン博士と共に、鬱屈した日々を送っていた。

一方、アメリカ合衆国はエイブラハムをベースにした平和維持戦略兵器<メカエイプ>を開発。早速、現地実験でめざましい成果を上げるメカエイプだったが、その高性能ぶりに目をつけた“あの国”の諜報機関がコントロール権を奪取。

たちまち敵側に寝返ったメカエイプは、1.2メガトン級の核弾頭を抱えたロボット爆弾に変身。シカゴを攻撃目標にすると、破壊活動を開始する。

頼みの綱は、単身メカエイプ内部に乗り込んだスローン博士。そしてメカエイプに唯一対抗しうる元祖類人猿型怪獣、エイブラハムだった……。

類人猿型AI兵器「メカエイプ」誕生

本作を語る上で欠かせないのが、目玉の類人猿型AI兵器・メカエイプである。登場直後は類人猿型怪獣エイブラハムそっくりに擬態しているが、攻撃を受けると外装の毛皮がはがれ、中からメカニカルな本体が現れる、という一連の演出は、『ゴジラ対メカゴジラ』(1974年)に登場する<にせゴジラ>および<メカゴジラ>を彷彿とさせる。

そんな巨大モンキー2匹の怪獣プロレスは案外おもしろく、迫るエイブラハムに対しミサイルやガトリングガンで応戦したり、「相手の頭をその辺に立っていた風車のブレードに推しつけ、ジリジリ切り刻もうとする」メカエイプの戦闘スタイルは、エンタメ精神を感じ好印象だ。

『ゴジラxコング 』と併せて観れば味わい倍増?

ただし、やはり制作規模の都合か、怪獣たちがしっかり画面に映る時間がかなり短めで、物足りなさを感じる点も否定できない。話が一気に動き、本格的に怪獣プロレスが展開する後半はまあまあの内容に仕上がっている一方、いつものことながら前半はとっつきにくい会話劇が中心の作りとなっている。

ほか、序盤の伏線をそれなりに綺麗に回収したクライマックスでの決着のつけ方など、脚本周りはアサイラム映画なりに最低限、ちゃんとしたまとまりを作ることには成功しているといっていいだろう。少なくとも、同社がたまにやる投げやりなディザスター・パニックものやSFエイリアンものよりかはずいぶんと志が高い部類に入る。

動きらしい動きのない画面の中で、ひたすら設定解説に終始している前半こそ決して褒められたものではないが、冒頭と後半にはところどころ「おっ」と思わせる見所が存在する一本である。もちろんそれは普段の、「そもそも見所自体ろくに存在しないタイプのアサイラム映画」との相対評価を含む上、『ロード・オブ・モンスターズ』シリーズの中では、おそらく一作目の方がおもしろいかと思われるが。

なお本作は続き物だが、単体でも問題なく見られるストーリーにはなっているため、興味がある方は『ゴジラxコング 新たなる帝国』の前に、ぜひ一度本作を鑑賞していただきたい。

文:知的風ハット

『ロード・オブ・モンスターズ 怪獣大決闘』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年3月放送

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