株式分割・増配・優待新設で株主還元に積極的な企業が増加中!新規発表した企業を紹介

東証は個人投資家が投資しやすい環境を整備するために、望ましい投資単位として50万円未満という水準を明示しています。2022年10月東証の山道裕己社長は、「投資単位の引き下げに向けて株式分割の実施と検討をお願いしたい」と企業に通知しています。


株式分割予定企業は約60社

筆者の調べでは、2024年3月19日現在、投資単位が100万円以上の銘柄は合計59社で内訳は100~150万円未満が32社、150万円~200万円未満が12社、200万円以上が15社となっています。

尚、2023年9月末時点(東証調べ)では、合計44銘柄でした。内訳は100万円~150万円未満が24社、150万円~200万円未満が8社、200万円以上が12社で、今年に入り日経平均株価が大幅上昇した事などで、投資単位100万円以上の企業が増加しています。このような状況を背景に3月末を基準日に株式分割を予定している企業が約60社あります。

富士通や三菱重工などが株式分割

株式分割とは1株1000円の株式を2株に分割すると、1株保有していた人は2株保有することになり、権利落ち後は1株が500円(1000円の2分の1)になるというもの。分割によって資産価値は変わりません。

今回大きな分割は富士通(6702)、三菱重工(7011)で、それぞれ1:10の割合です。富士通の株価は2万6040円ですので1単元の購入には最低でも約260万円以上が必要になり、個人投資家が買うにはかなり負担が大きいです。分割後は1単元、約26万円で買えるのでだいぶハードルが低く感じると思います。

他には1:5の分割で1単元が大きいのは東映(9605)と東映アニメーション(4816)などです。東映の株価は2万0030円で、最低必要額は約200万円以上。東映アニメーション1万6050円で、最低必要額:約160万円以上ですので分割後はそれぞれ約30~40万円で購入できるようになります。

増配を発表した丸三証券

また、東証は昨年【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】を上場会社に促しました。そうした事から今後の成長戦略や株主還元の見直しなどを行う旨の発表が多くなっています。なかでもこの3月に増配を発表した企業で目立ったのは丸三証券や極東証券の証券株です。

丸三証券(8613)は、昨年9月、2024年3月期から 2028年 3月期までの間、普通配当に加え、特別配当を実施するとしました。2024年3月期から2026年3月期まで1株当たり特別配当金を中間、期末配当をそれぞれ15円、年間配当「30円」の方針を掲げています。また、2027年3月期特別配当金を中間、期末配当をそれぞれ「10円」、年間配当「20円」、2028年3月の特別配当金を中間、期末配当をそれぞれ5円、年間配当「10円」の方針を示しています。昨年10月に普通配当「10円」も発表し2024年の中間配当は25円に決定しました。3月15日に期末配当も「20円」と特別配当「15円」と合わせ年間「60円」の配当としています。3月22日現在の株価1155円で配当利回りは5.19%の高配当になります。

※株価は全て3月22日時点のもの

増配発表により高値を付けた極東証券

極東証券(8706)は3月13日、配当方針の変更として「株主還元の更なる充実を図るため、現在の自己資本の状況等を踏まえ、連結配当性向基準について50%から70%に引き上げる」と発表しました。この変更により増配を決定した形です。これまで「非開示」だった2024年3月期の予想配当を、中間配当(9月・権利確定済み)「30円」、期末配当(3月)「80円」、合計年間配当額「1株あたり110円」と発表しました。

2023年3月期の配当は「1株あたり30円」だったので、前期比で「80円」の増配見込みです。3月22日現在の株価1777円で配当利回り(予想)は6.19%です。13日の発表前の終値は1390円でしたが発表翌日に株価は急上昇して、15日には高値1792円を付けました。

大林組も増配発表により株価急上昇へ

大林組(1802)は、2024年3月期の予想配当を修正し、中間配当(9月・権利確定済み)「21円」、期末配当(3月)「51円」、合計の年間配当額「1株あたり72円」と発表しました。年間配当額の前回予想は「1株あたり42円」でしたので前回予想から「30円」の増配となります。ROE(自己資本当期純利益率)は中期的に8%以上とする目標から2026年度までに10%以上にするとし、それに伴って配当方針も、DOE(自己資本配当率)3%程度を目指す還元方針からDOE5%程度へと変更しました。現在の株価1908円で配当利回り(予想)は3.77%です。発表翌日には株価はストップ高まで上昇し、現在も上昇中です。

その他、4%以上の高配当の銘柄はJALCO(6625)、大盛工業(1844)、アジア航測(9233)、モリ工業(5464)なとで、いずれも増配を発表しています。

株主優待の新設も

株主優待の新設も発表されています。QLSホールディングス(7075)は毎年「3月末」時点の500株以上保有の株主を対象に「こども商品券3000円分を贈呈」すると3月14日に発表しました。

くすりの窓口(5592)は上場記念株主優待を実施することを発表し、「2024年3月末」時点の株主を対象として100株以上の株主に「QUOカード3000円分を贈呈」すると3月13日に発表しました。

三井不動産(8801)は毎年「3月末」時点の株主を対象に「100株以上を一定期間以上保有で、保有株数と継続保有期間により、ららぽーとや三井アウトレットパークなどで利用できる「三井ショッピングパークポイントを贈呈」と3月1日に発表しました。同社はこれまで株主優待を行っておらず今回新設の発表となりました。尚、三井不動産の株価は3月19日に上場来高値を更新しています。

分割、増配、優待と株主還元を行う企業が増加する事で、株式市場へ資金流入を考える投資家も増加するように感じます。東証の改革によって企業も少しずつ変化しているように感じます。

※株価は全て3月22日時点のもの

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