親の視点で物語描く 愛媛「帰郷」早見和真さんの新刊「アルプス席の母」 高校野球の見え方変化

新天地・東京でより精力的な創作活動に励む早見和真さん。1週間ほど滞在した松山では、知人や友人らとの旧交も温めたという

 2008年のデビュー以降、数々の話題作の発表を続けてきた小説家早見和真さん。16~22年には松山市を拠点に活動し、愛媛新聞連載の「かなしきデブ猫ちゃん」シリーズの作者としてもおなじみだ。このほど、新刊PRのために来県した早見さんに愛媛への思いや東京での執筆の様子を語ってもらった。

 6年間暮らした愛媛への久々の「帰郷」だ。

 公の仕事で戻ってくるのは1年半ぶりくらい。正直、悔しいけど、ホッとしている。その悔しさが何かというと、「今が一番」と言っていたい自分の中に「やっぱり愛媛時代はよかった」なんて気持ちがよぎりそうなムカつき。

 3月15日には「アルプス席の母」が発売。デビュー作以来、15年ぶりに高校野球を題材に選んだ。

 実際に済美や松山商業といった愛媛の高校のほか、全国の強豪校の保護者の方たちにインタビューさせてもらい、誰もが「やっと機会が来た」と思いを吐き出してくれた。球児を支える彼ら彼女らにも主軸となる物語は当然存在した。「あの夏の正解」を経なければ書けなかった物語であり、経たからこそたどり着けたラストになった。

大勢のファンが集まった「ジャックの“ 1ばん ”さがし」のサイン会で笑顔を見せる早見和真さん(右)とかのうかりんさん

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