大分県、避難所運営にICT活用へ マンパワー不足解消へ市町村に導入促す【大分県】

タブレット端末を使った避難所の受け付けシステムを体験する自治体職員=2月、大分市横尾

 災害時の避難所運営を担うマンパワーの不足を解消するため、県は情報通信技術(ICT)の活用と普及に乗り出す。能登半島地震では被災状況の調査などに人員が割かれ、避難所に手が回らなくなる課題が浮き彫りになった。業務の効率化や避難生活の環境改善を図る新たなツールとして、各市町村に導入を促していく方針だ。

 県などによると、市町村の指定避難所は自治体職員を中心に運営することが多く、地域の防災会のメンバーが携わることもある。過去の災害では人手不足により業務が滞るケースもあった。

 特に避難者の受け入れ時は、一人一人が氏名や年齢を名簿に書き込むため混雑が起きやすい。ICTの活用例として、運転免許証やマイナンバーカードに記載された氏名などを読み取る自動入力システムを使えば、省力化と情報共有に役立つという。

 市町村の担当者に知ってもらおうと、県はICTを取り入れた避難所運営の体験会を2月に初めて開催。県内外のIT企業や大学が機器を紹介した。遠隔操作で問診や健康管理ができるロボット(アバター)や、避難所の混雑状況を可視化する技術の説明もあった。

 参加した佐伯市防災危機管理課の笠村真央主事(29)は「大きな避難所には多くの市民が一気に集まる。情報をリアルタイムで共有でき、活用できれば運営もスムーズになる」と期待した。

 ただ、実際に使えるかどうかは未知数な部分もある。日田市社会福祉課の華藤善紹(ぜんしょう)課長(56)は「被災時に通信環境や電源を確保できるかが課題」と指摘した。

 2016年の熊本・大分地震後、県は「自治体職員だけでの避難所運営に限界があった」として、住民も運営に参加するマニュアルの策定を各市町村に促し、訓練を重ねてきた。

 今後新たな取り組みとしてICT導入に向けた支援をする。専門家や企業からのアドバイザーを市町村に派遣して後押しする。

 県生活環境企画課は「地域の協力があっても、大規模災害が起きればマンパワー不足が懸念される。避難所の健康管理にもデジタル技術を生かせるようにしたい」と話した。

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