上田綺世の薫陶を受けた細谷真大。アジア杯参戦の経験を大岩ジャパンに還元し、ウクライナ撃破の一発を期待したい【U-23代表】

2024年パリ五輪のアジア最終予選を兼ねるU-23アジアカップを4月に控え、大岩剛監督が率いるU-23日本代表のチーム強化も佳境を迎えつつある。

3月25日のU-23ウクライナ代表戦は、本番前最後のテストマッチ。戦火の中、タフなメンタリティで五輪切符を勝ち取った相手はそう簡単に勝てるチームではないだろう。

「ウクライナは個人の技術がしっかりしていて、後ろからのビルドアップや素早いショートカウンターもすごい。身長が高くて、身体もデカいし、タフにマークもついてくる。本当に難しい相手だと思います」と、インサイドハーフで先発濃厚の松木玖生(FC東京)も警戒心を露にしていた。

守勢に回る時間帯が長くなるかもしれないが、耐えるべきところは耐えて、少ないチャンスをモノにしなければ、日本は勝ち切れない。

22日のU-23マリ代表戦のように、フィジカルの強い相手にあっさりとかわされ、失点を重ねていたのでは、最終予選突破は難しくなる。今回は守備を確実に修正したうえで、虎視眈々とゴールを狙っていくべきだ。

そのけん引役となるのが、アジアカップ参戦組のエースFW細谷真大(柏)だろう。

「A代表経験のある選手にはグラウンド上以外のところでのアクションにも期待したい」と指揮官もコメントしていたが、細谷はA代表の主力である遠藤航(リバプール)や冨安健洋(アーセナル)らの立ち振る舞いを間近で見てきたはず。その経験値は大きい。

「練習中でのコミュニケーションの取り方は、五輪世代より多いのかなと。練習中に起きたミスや戦術の部分をすごく深く話していた」と本人も語っていたが、ピッチ内で混乱が生じた際、率先してチームをけん引しなければならない。

もともと口数の少ない男だが、最終予選に向けて“闘将化”が必要。その一端をまずはウクライナ戦で見せるべきだ。

そのうえで、ゴールという結果でチームを勝利へと導く必要がある。細谷はA代表の主軸FW上田綺世(フェイエノールト)と連日、シュート練習に励んだ。フィニッシュの技術や駆け引きの部分を事細かく学んでいた。

「(綺世君と一緒にプレーして)決めきるところ、ラストパスを要求するタイミング、動きの質はもっと上げられると感じた。クロスからの得点も増やしたいと思っています。代表もクロスからの得点が多いですし、自分のパターンを広げていきたいですね」と、彼は今季開幕前に話しており、その部分に精力的に取り組んでいる。

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今のところ、今季のJ1ではまだ無得点だが、その鬱憤をウクライナ戦で晴らしたいところ。代表合流直前の16日の名古屋グランパス戦後には「しっかりチームのために走りながら、足りてないゴールってところに自分自身、しっかり向き合い、結果にこだわっていきたい。そのためにも周囲との距離感を近くして、攻撃に厚みをもたらすことが大事。クロスの入り方にもまだ課題があるので、改善していかないといけないですね」とも語っており、それをこの試合で具現化できれば理想的。大きな手応えを掴めるはずだ。

これまでU-23代表で長く共闘してきた鈴木唯人(ブレンビー)ら主要な欧州組が不在で、荒木遼太郎(FC東京)のようにプレー回数の少ない選手とも一緒に戦うことになるが、お互いの特徴を短期間ですり合わせて、自らが得点できる形を作っていかなければいけない。そのためにも、やはり細谷が積極的にアクションを起こし、周りに要求していくことが重要だ。

先輩の上田も数々のトライを繰り返しながら、東京五輪、カタール・ワールドカップを経て、現在は日本代表で最大の得点源になりつつある。その背中を追いかけるべき細谷も、ここから一気に突き抜けていかなければいけない。

そういう意味で、今回のウクライナ戦は絶好の飛躍のチャンス。五輪出場国を相手にも十分戦えることを示せれば、A代表復帰の道も見えてくるだろう。

「今回はホームで試合ができる。そこで五輪出場を決めているチームに勝てたら、自分たちも自信がついて、最終予選に臨めると思うので、結果にこだわってしっかり戦っていきたいなと思います」

改めて気合を入れた22歳の点取り屋には、急遽、視察に訪れることが決まった森保一監督の前で“確固たる違い”を印象付けてほしいもの。数少ないA代表経験者として、細谷にはウクライナを撃破する一撃を強く求めたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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