<まる見えリポート>山商16年ぶりセンバツ 村田監督着任が復活の転機 三重

【1回戦の終盤、選手に語りかける宇治山田商・村田治樹監督=21日、阪神甲子園球場で】

 阪神甲子園球場で開催の第96回選抜高校野球大会で東海地区代表の宇治山田商(三重県伊勢市)が勝ち残っている。初出場で、初戦の安房(千葉)戦に勝って三回戦に進出した平成20(2008)年以来のセンバツ。今月21日の東海大福岡との一回戦で、相手に二度追いつかれながらその都度突き放す粘り強い試合運びで、16年ぶりの甲子園1勝を挙げた。

 近年県大会の頂点から遠ざかっていたが、昨年秋の県大会で16年ぶりの優勝。センバツ出場校選考の重要な資料になる秋の東海大会で4強入りして、東海地区代表3校のうち2校目に選ばれた。創部100年以上の伝統を誇る野球部の復活は、現監督の村田治樹教諭(53)の着任が転機となった。

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 野球部の創部は大正10(1921)年。甲子園出場は春夏含めて過去四度。複数のプロ野球選手も輩出している伝統の野球部は長年OBが監督を務めてきたが、平成28(2016)年から津西OBの村田教諭が率いている。

 現役時代は内野手。三重大3年時に1番、遊撃手で全日本大学選手権にも出場した。卒業後社会科の県立高校教員に採用されると野球部の指導も始め、卓越した指導力で頭角を現した。

 選手の自主性を育てて結果に結びつける指導スタイルは進学校の母校を率いた津西監督時代に培われた。「最短時間の最大効率」をスローガンに学業と部活を両立させ、同23(11)年夏の県大会準優勝などの実績を残した。

 津西の監督当時、「身体能力が高い選手は多いが、粘れない」と感じていた宇治山田商の監督に就任すると、選手らに対して日常から継続して取り組む意識付けを行い、思考力を育んできた。

 令和6(24)年からの「低反発バット」の完全移行が決まると1年前から新基準バットを使った練習を始めるなど早めの準備も奏功した。東海大福岡戦で先制点をたたき出す中犠飛を放った2年生の郷壱成は「高校に入った時から(新基準バットを)使っていたので違和感はなかった」と話していた。

 選手の自主性を尊重する一方で適切な声かけで選手を導くことにも気を配った。16年ぶりの甲子園1勝が見えてきた東海大福岡戦の終盤も「普段通り」の声かけで、選手たちの力を引き出した。

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 16年ぶりのセンバツ出場が決まると野球部OB会が記念パーティを開き、野球部前監督を含めた約60人が激励に駆けつけた。甲子園出発前最後の練習試合は、野球部OBの森本進監督が率いる皇學館大の胸を借りた。村田監督は「外様の自分を受け入れてくれて感謝している」と話す。

 甲子園初戦当日は近隣高校の吹奏楽部員、チアリーダー部員も含めた1000人以上がスタンドに集結した。周囲の支えも励みに、選手らは同校初の甲子園2勝を懸けて26日予定の中央学院(千葉)との二回戦に臨む。

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