船橋・津田沼のホッと一息つける喫茶・カフェ6店。食と空間が奏でる、至福の喫茶時間

住宅地、横丁、商店街などにあり、どこも気軽な店構えだが、足を踏み入れ、イスに腰かけた途端、店特有の時間が流れだす。かんばしい香りとのどかな会話、静寂を埋める音が混じり合い、ゆっくりと、心をとろかせてくれるのだ。

『Kakuya Coffee Stand』でひっそりと味わいたい悦楽[京成西船]

ネルドリップコーヒーの深煎り700円とひんやり甘いカタラーナ550円。
友人作の看板を頼りに階段を上がれば、山小屋風のひそやかな空間が待つ。
ドリップすると香りが魅惑的に漂いだす。

温かな明かりが照らす総木造りの空間にため息。ここではネルドリップコーヒーを。金網ドリップを手に、湯を点滴して抽出。浅煎り、深煎りの2種の豆は、約1カ月ごとに品種を変えた自家焙煎で、濃密な香りに全身の力が抜けていく。「西船の人情に惚(ほ)れて、ここにたどり着きました」と、コーヒー屋台で全国を旅した店主の蘆田格也さんは、軒下営業に始まり、焙煎工房を店に作り替えた。日々、疲れを癒やす常連客が後を絶たない。

蘆田夫妻で営む。

『Kakuya Coffee Stand』店舗詳細

Kakuya Coffee Stand 住所:千葉県船橋市西船5-15-5-2F/営業時間:12:00~22:00/定休日:不定/アクセス:京成電鉄本線京成西船駅から徒歩8分

『SUNNY DROP』はくつろぎのコーヒースタンド[京成船橋]

ラテ530円、蒸し焼きしたプリン600円。
ラテアートが美しい。
スイーツ類もテイクアウト可。

ターコイズブルー、コーラルピンクの2色の壁がアメリカンポップ。「カリフォルニアメキシカンが好きすぎて」と笑うのは、店主のりつさんだ。うっとりするのがラテ。オリジナルブレンドを濃く抽出したエスプレッソのビターな香りとクリーミーなミルクが絶妙。むっちり固いプリン、甘くほろほろのマフィンなど、アメリカンなスイーツも見逃せない。カウンター席ながらほっこり落ち着く空気感に、年配客も足しげく通う。

「キューバサンド1100円はハラペーニョ追加+60円がおすすめ」とりつさん(左)。不定期でイベントも開催。

『SUNNY DROP』店舗詳細

SUNNY DROP(さにーどろっぷ) 住所:千葉県船橋市本町1-13-4 デボネア船橋1F/営業時間:11:30~17:00(金・土は~21:30)/定休日:火/アクセス:京成電鉄本線京成船橋駅から徒歩2分、JR・東武野田線各船橋駅から徒歩4分

『tip cafe』のウッディなリビングで香りを満喫! [高根木戸]

黒いちごのシフォンケーキ950円はハーフあり。ブレンドはセットで+250円。
ハンドドリップで抽出。
豆も販売。

深緑色の天井から枯れ葉をまとうランプが下がり、木棚に自家焙煎豆が並ぶ。藤原夫妻の“好き”を形にした空間は、まるで明るい森のよう。益子焼や笠間焼のカップに注いだコーヒーは甘みと苦味が豊かで、すっきりとした後味が印象的だ。また、季節のシフォンケーキもいい。早春は「衝撃的な味」という、大網白里市発祥のクロイチゴ“真紅の美鈴”の出番だ。甘み濃く、かむと甘酸っぱい香りが弾ける。

藤原さん一家。息子の広忠さん手製の什器も進化中だ。カレーも評判。

『tip cafe』店舗詳細

tip cafe 住所:千葉県船橋市西習志野2-2-12/営業時間:11:00~16:00/定休日:火~金(木・金はレンタルキッチン)/アクセス:新京成電鉄新京成線高根木戸駅から徒歩2分

『珈琲屋からす』は風情も味わいも昭和の面影あり[京成津田沼]

カフェ・カプチーノ600円、ツナトースト450円。
トーテムポールがツヤピカ。喫煙できる大人の喫茶店だ。

2体の手彫りトーテムポールが店内入り口で門柱のように置かれ、赤い椅子、木柱、円形の窓が独特の風情を醸す。1963年創業の店を彩るのは、2代目中本千絵さんの両親が修業した市川「さぼうる」(閉店)の彫刻家店主の作品だ。メニューにも心躍る。シナモンスティックをスプーン代わりに用いるカプチーノは、昭和喫茶ならでは。上品な香りが立ちのぼる中、ゆったりのんびり味わいたい。

店を営む中本千絵さん、娘の大石千津さん。
看板のイラストも、彫刻家店主によるもの。

『珈琲屋からす』店舗詳細

珈琲屋からす 住所:千葉県習志野市津田沼5-6-17/営業時間:10:00~19:00(土・祝は12:30~18:00)/定休日:日・不定/アクセス:京成電鉄本線津田沼駅から徒歩5分

『SMACK COFFEE ROASTERS』で音楽とアートと、コーヒーを楽しむ[実籾]

SMACKブレンド410円、香ばしいハニーアーモンドトースト(ヨーグルト付き)430円。ジュークボックスは現役。
宝箱のよう。販売する焙煎豆はお値打ち。

ポップなライトが随所でともり、棚をレトロ雑貨、壁際をLPジャケットが彩る。音楽やアートの洋書、レコードもずらり。「焙煎機が置きたくて」と探し当てた元倉庫にはマスターのコレクションが満載。ミッドセンチュリーのデザイナーズチェアに身を委ね、ロック&ポップスに体を揺らし、自家焙煎のコーヒーを手にのんびり読み耽(ふけ)る人が少なくない。小腹にいいトースト系はコーヒーのお供に。

ドリップするマスター。
2020年に開店。

『SMACK COFFEE ROASTERS』店舗詳細

SMACK COFFEE ROASTERS 住所:千葉県習志野市東習志野4-15-18/営業時間:12:00~19:00/定休日:火・第1・3水/アクセス:京成電鉄本線実籾駅から徒歩20分

『珈琲茶房 光香(こうか)』の和室+カフェ漬けでまったりする。[二和向台]

箸休め付きカフェ漬けセット1100円。香り豊かな深煎りプチコーヒーも付く。
内側から灯る障子、常連作の絵画が実家感を演出。
修業先の市川『と庵』を借りて川田さんが焙煎。

メニューにあるのは、世にも珍しきカフェ漬け。「超浅煎りをお茶漬けにしたものです」と、店主の川田純さん。茶釜から茶杓で湯をポットに注ぎ、木肌色の焙煎豆を抽出したコーヒーは薄茶色。飲めばこっくりとした黒豆茶のよう。自家製米した7分搗(づ)きご飯と雑穀のプチプチ感、塩昆布などの箸休めと一緒に、さらさらと胃の腑に収まる。和の雰囲気の中、うとうとまったり、時が過ぎる。

路地に潜む。

『珈琲茶房 光香』店舗詳細

珈琲茶房 光香(こーひーさぼう こうか) 住所:千葉県船橋市二和東5-8-23/営業時間:7:30~18:00ごろ/定休日:火/アクセス:新京成電鉄新京成線二和向台駅から徒歩4分

取材・文=林さゆり 撮影=井原淳一
『散歩の達人』2024年3月号より

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