離婚で財産4000万円が争点に…「俺の金だ」「私の努力あってこそ」一歩も譲らぬ両者の主張

離婚において財産分与という手続きが行われることは多くの方が知っていることだろう。離婚に関わる必須の手続きと言ってもいい。ただ、財産分与は一般的に「夫婦で半分ずつ財産を分ける制度」と言われるが、絶対に半分ずつというわけでもないのが実情だ。

今回は、財産分与にまつわる勘違いで“大失敗”してしまった女性の事例について紹介していこう。

竹下さん夫婦の離婚までの経緯

「私はあなたから財産分与で貯金の半分を受け取る権利がある!」

そう力説するのは友美恵さん(39歳・女性)。それに対して「はぁ? これは俺の金だ! ふざけるな」そう返すのは巧さん(42歳・男性)だ。

巧さんと友美恵さんは16年ほど前に職場での出会いをきっかけに結婚。だがしかし、交際期間が数カ月しかない状態での授かり婚だったこともあり、結婚後はライフスタイルの違いを理由に喧嘩が頻発。そんな中、近々子どもが中学校を卒業するため、区切りをつけるために夫婦で話し合って離婚することになった。

夫婦にとって前向きな離婚ということもあり諸々の条件がスムーズに決まる中、財産分与についてだけが決まらない。その理由は竹下さん夫婦の貯金の出どころにあった。

夫が持つ莫大な財産の出どころは……

竹下さん夫婦には離婚時4000万円近い額の貯金があった。この貯金は巧さんが数年前父親から相続したものであり、“夫婦の婚姻中に得た財産”だ。

当然、友美恵さんもこのことを知っている。婚姻期間中にこそ言っていなかったものの、自分もこのお金を受け取る権利を持っていると思っていた。それゆえ、離婚に向けた話し合いをしている今、財産分与によって自分もその財産を「半分は受け取る権利があるのではないか」と主張し始めたのだ。

だが、巧さんとしては突然権利を主張されたようなもので、たまったものではない。夫婦で協力してためたお金ならまだしも、出どころは先祖代々受け継がれてきた財産だからだ。

「これは俺が親から受け継いだものだ、君は関係ないだろう。財産分与する理由がない」

それもその通りで妻たる友美恵さんの存在と相続とは一切関係がない。だがしかし友美恵さんも友美恵さんで譲らない。

「お義父さんの介護やお葬式、私はあなたの身内としていろいろな手伝いをしてきたのよ? そのお金も私の努力があってこそじゃないの」

もちろん友美恵さんの言うことにも一理はある。結果的に巧さんは4000万円の財産を相続によって得てはいるが、それを得たのは友美恵さんの協力のあった婚姻中であり、考えようによっては夫婦で築いた財産になるだろう。

●財産4000万円の分け方をめぐり意見が食い違う夫婦。果たしてどちらの主張が正しいのか? 後編【「離婚をなかったことにしてほしい」テレビの情報を信じて大誤算…不幸のドン底へ落ちた女性の末路】で詳説します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。

※人物の名前はすべて仮名です。

柘植 輝/行政書士・FP

行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。

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