保健師、土木、建築… 青森県内町村、職員採用に苦労 14町村で専門職応募者なし

横浜町が行った高卒程度一般行政などの2次募集実施要項

 青森県内の町村の職員採用で、保健師や土木、建築といった専門職を中心に応募者が減っていることが、県町村会のまとめで分かった。本年度実施の専門職の採用試験では14町村で応募者がいなかった。少子化や売り手市場を背景に、民間事業者らに流出したとみられる。道路などインフラの維持管理や福祉業務といった地域社会に不可欠な役場職員が確保できない事態に、各町村は危機感を募らせている。

 県町村会によると本年度、2024年4月採用で大学卒業程度の保健師を12町村が募集したが、6町村で応募者がゼロ。短大卒程度の保健師も8町村が募集し、6町村で応募者がなかった。大卒程度の土木職は8町村が募集し、5町村で応募者ゼロ。高卒程度の土木職も募集した6町村中2町村で応募者がなかった。応募があったものの、実際の受験者がなかった町村も見られた。大卒程度の行政職(障害者枠を除く)も3町村で応募者がなく、短大卒程度の一般職でも2町で応募者がなかった。

 大卒程度の行政職、高卒・短大卒程度の一般職、大卒・短大卒・高卒程度の専門職を合わせると、過去3年間では、21年度は11町村、22年度は14町村、23年度は18町村で応募者ゼロの職種があった。

 県内全町村の応募者の合計(障害者枠を含む)は、13年度は772人だったが、23年度は365人にとどまっている。

 県町村会によると、市部から遠い町村は特に応募者が集まりにくい状況。町村で合格しても、市や待遇の良い県外の事業所などで合格したことを理由に辞退するケースもあったという。

 県内の新規求人倍率の推移を見ると、13年度は1.06倍だったが、22年度には1.91倍に上昇している。

 同会の原田啓一事務局長は「県内外で民間採用が積極的になっていることも、応募者減少に影響しているのでは」との見方を示す。「ここ2、3年募集しても応募者がない町村が急激に増えてきている」とし「人材確保は町村共通の課題。学校などと情報交換し、役場職員の仕事の魅力のPR方法など、応募者増加につなげるための問題点を把握し、対応しなければならない」と語った。

 県市長会では県内10市の採用状況について取りまとめていないという。

▼業務や地域社会への影響懸念

 職員採用への応募者が減少している県内町村は、役場業務への支障や地域社会に影響が生じることへの懸念があり、対策に頭を悩ませている。

 横浜町は本年度、大卒程度と短大卒程度の保健師を募集したが、ともに応募がなかった。保健師は健康増進、母子保健、心の健康づくり、介護予防などの役割を担っており、菊池和也総務課長代理は「今いる保健師の負担が大きい。将来的に業務に支障が出るのではないかと心配している」と話す。

 同町は、大卒程度の行政職、高卒程度の一般職も若干名募集した。一般職は1次募集で応募者がなく、初めて2次募集を実施し、ようやく応募があった。菊池課長代理は「少子化で売り手市場の中、条件が良い民間事業者に応募しているのではないか」とみる。従来の町の広報紙やホームページでの募集に加え、就職情報会社を活用することも検討しているという。

 野辺地町では、行政職、一般職を合わせた受験者は、2021年度と本年度は10人に満たなかった。受験者が減少した影響で、22年4月の採用は1人のみだった。現状では、5年ごとに退職者などを加味して作成している職員の採用計画の人数に満たないという。本年度から、初任給を引き上げて人材確保に努めているが、減少傾向には歯止めがかかっていない。

 同町の山田勇一総務課長は「少子化に加え、人材が都会に出たり、地元でも民間に流れている」と話す。町は社会人枠の創設を検討している。

 今別町は5年ほど前から毎年保健師を募集し続け、本年度ようやく応募があった。採用担当者は「さらに1~2人ほしい。若い人がもっと入ってきてくれればいいのだが」と話す。

 一方、六ケ所村の種市誠総務課長は「行政職は応募者が減っているという感覚はない」とし「技術職や資格が必要な職種については、募集年齢を広くして対応している」と語った。

© 株式会社東奥日報社