アングル:米株で広がる物色対象、マグニフィセント・セブン頼みから脱却

Lewis Krauskopf

[ニューヨーク 22日 ロイター] - 米国株式市場では、経済の先行きに対する安心感や米連邦準備理事会(FRB)からのハト派的なメッセージを背景に、過去1年の値上がりを主導してきた超大型7銘柄「マグニフィセント・セブン」以外にも投資家が幅広く物色の手を伸ばそうとしている。

エヌビディア、アップル、グーグル親会社アルファベット、テスラ、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コムで構成するマグニフィセント・セブンのうち、確かに今年になってもエヌビディアやメタは株高の主要なけん引役を務めている。しかしセクター別で見ると、今年は金融やエネルギー、工業などが、年初来上昇率9.7%のS&P総合500種をアウトパフォーム。こうした動きは、ごく一握りの銘柄に相場を左右されてしまうとの懸念を和らげるものだ。

シティの米株式戦略責任者スコット・クロナート氏は「FRBが景気後退をもたらさずに物価上昇率を長期的な目標に収められるとの確信が強まっている。FRBが今後どこかの時点で利下げすると考えるなら、銀行株や工業株を保有できるとの安心感は増す」と述べた。

同行はハイテクとともに金融と工業のセクターの投資判断を「オーバーウエート」としている。

昨年は、経済の先行き不確実性が漂う中で、投資家の資金が財務基盤と事業面でともに強固さがあるマグニフィセント・セブンに集中した結果、S&P総合500種をアウトパフォームしたのはこれらの銘柄を含む情報技術、通信サービスと一般消費財だった。

一方で今年は年初来上昇率で金融が10.1%、工業が9.9%、エネルギーが10.3%とそれぞれ好調だ。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、21日時点でS&P総合500種の上昇分に占めるマグニフィセント・セブンの比率は40%と、昨年の60%超から低下し、買いの裾野が広がったことが裏付けられた。

ダコタ・ウエルスのシニア・ポートフォリオマネジャー、ロバート・パブリク氏は、値上がり銘柄が増えたことで、けん引役が分散し、調整に対する脆弱性も相対的に薄れると指摘した。

昨年足並みをそろえて上昇したマグニフィセント・セブンが、今年はまちまちの値動きになっている点も投資家が他の銘柄に目を向けるきっかけになっている。

人工知能(AI)への熱狂が続く中でエヌビディアは今年もこれまでに90%上がり、マイクロソフトも14.5%高と堅調な半面、アップルとテスラはそれぞれ下落率が約11%と32%だった。

21日時点でS&P総合500種をアウトパフォームしている銘柄数は180と、これも昨年の150より多い。

小型株がなお低調なことは一部で懸念されている。小型株中心のラッセル2000は年初来で2.2%しか上昇していない。ただFRBの利下げがこの先は小型株にとって追い風になり得るとの声も聞かれる。

クレセット・キャピタルのジャック・アブリン最高投資責任者は「FRBの利下げに伴って流動性が生まれ、市場で資金調達がしやすくなる。ではそのメリットを最も享受するのは誰か。それは金利動向に資金アクセス状況が影響されない超大型銘柄ではなく、より小規模であまり名の知られていない銘柄だ」と述べた。

米経済が腰折れしたり、逆に過熱化して、いわゆる「適温経済」シナリオが崩れたりすると、こうした幅広い買いの流れは変調を来すかもしれない。

それでもチェース・インベストメント・カウンセルのピーター・タズ社長は、現在の基調が続くと見込んで、最近はゴールドマン・サックスや石油会社タイドウォーターの株を買って、アップル株を売却するなど超大型銘柄の保有を減らしている。

タズ氏は「株式市場(の買い)は広がり続けている。今年はマグニフィセント・セブン以外でも利益を得る方法が多くなるだろう」と強調した。

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