年金の「免除申請」をすると受給額はどうなる?申請し続けても年金は「受給」できる?

国民年金で利用できる免除制度と納付猶予制度とは

国民年金は、日本在住の20~60歳であれば、加入が義務付けられている年金保険です。しかし収入状況によっては、年金保険料を納められない可能性もゼロではありません。その場合に利用できるものが「免除制度」や「納付猶予制度」です。

収入減少などを理由に、国民年金保険料を支払えなくなった方が申請すると、受給資格期間を減らさずに、保険料を納める期間を免除してもらったり、猶予してもらったりできます。

ただし支給される年金額は、納めている場合と比べると減少するため、制度を利用する際は注意が必要です。

受給資格期間とは

受給資格期間は、老後に年金を受け取る権利を取得するために必要な期間です。老齢基礎年金を受け取るためには、基本的に国民年金保険料を、最低10年以上納付している必要があります。もし納付している期間が足りなければ、老後の年金は受け取れません。

免除制度の利用条件

免除制度とは、申請をして認定されると、年金の支払い自体を免除してもらえる制度です。所得状況により、全額免除をはじめとして、4段階から免除する割合を決められます。各免除を受けるための前年の所得条件は、表1の通りです。

表1

※日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」を基に筆者作成

例えば、扶養している親族が1人いる場合は、前年の所得が102万円以内であれば、全額免除の対象になります。

ただし、免除制度を利用すると、老齢基礎年金は満額を受け取れません。老齢基礎年金の金額は、免除月数に応じて減っていくからです。

もし12ヶ月間全額免除を受けて、残りの期間はすべて制度を利用せずに納めた場合は、令和5年時点の年金額で、78万5063円受け取ることになります。もし通常通りに欠かさずに全期間支払った場合は、支給される年金の満額は79万5000円ですので、9937円の減額になります。

納付猶予制度の利用条件

納付猶予制度も、申請をして認定されると、受給資格期間はそのままで、年金の支払いの先送りが可能になります。前年の所得が、以下の式で求められる金額以下であれば利用できます。

・(扶養している親族などの数+1)×35万円+32万円

なお、免除制度とは異なり、あくまでも猶予ですので、追納しなければ、年金の金額計算に猶予期間は含まれません。例えば、猶予を12ヶ月間受けた場合では、468ヶ月納付したとみなされるため、令和5年時点の受給額は、77万5125円です。

申請に期限はある?

所得上限を超えていなければ、制度は期間にかかわらず利用が可能です。しかし、受給資格期間が減らないだけで、支給される金額は、制度を使った期間に応じて減額されることになります。

少しでも受け取る額を満額に近づけたい場合は、追納制度を利用しましょう。過去10年以内かつ老齢基礎年金の受給者でなければ、免除を受けた年金でも、後から納めることができます。

制度を利用すると年金の受給資格期間はそのままだが、受け取れる金額が減る

国民年金保険料は、収入に余裕がないといった理由で支払えない際には、免除制度や納付猶予制度を利用することで、受給資格期間を減らさずに、保険料の負担を軽減することが可能です。

ただし、制度を利用すればするほど、老後に支給される年金額は減ります。もしも収入に余裕ができたならば、追納することも検討してみましょう。

出典

[日本年金機構
国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度](https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html)
老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
年金Q&A(国民年金の加入) Q国民年金はどのような人が加入するのですか。
年金Q&A(国民年金の保険料) Q免除されていた保険料は、後で納めることができますか。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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