「毎月分配型」の資金流出が続くなか、eMAXIS Slim“オルカン”は2000億円超えの流入で首位独走

「eMAXIS Slimシリーズ」に高水準の資金流入が続く

個別ファンドの中で2月に最も資金流入額が大きかったのは、三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」だった。月間資金流入額の記録を更新した前月の3428億円にはおよばないものの、今月も2285億円と高水準の資金が流入した。また、同シリーズの「米国株式(S&P500)」は、1816億円で2位だった。

また、三井住友トラスト・アセットマネジメントの「半導体関連 世界株式戦略ファンド」が5位、野村アセットマネジメントの「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」が8位とトップ10入りしている。どちらも世界の半導体関連企業を投資対象としたアクティブファンドで、新NISAの成長投資枠の投資対象となっている。

エヌビディアを中心としてAI・半導体関連企業は、2024年に入っても大きく上昇しており、関連ファンドにも高水準の資金流入があった。ただ、半導体関連企業の株価はボラティリティが高いので、ハイリスク・ハイリターンのファンドであるという認識が必要である。

■eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

基準価額 2万3162円
信託報酬 0.05775%(年率・税込)
純資産残高 2兆6248.2億円

<騰落率>
1カ月 5.0%
3カ月 12.5%
6カ月 14.3%
1年 35.2%

※2月末時点

新規ファンドでは「SBI欧州高配当株式(分配)ファンド(年4回)」が資金を集める

2月の公募株式投信(ETF除く)は、前月比で5兆2978億円増加し、116兆8934億円と、4カ月連続で過去最高を更新した。さらに、増加額は2023年11月の6兆3121億円に次ぐ、史上2番目の規模となった。内外の株式市場で、日経平均株価など主要株価指数が最高値を更新したことが寄与した。

資金流入額は1兆2160億円で、資産別では外国株式型(約9650億円)、エマージング株式型(約1440億円)、国内株式型(約1120億円)の順に資金を集めている。

また、2月の新規設定は18本と、1月の38本から減少し、設定額も約160億円と1月の約790億円から大きく減少した。個別ファンドで設定額が最も多かったのは、「SBI欧州高配当株式(分配)ファンド(年4回)」だった。

同ファンドは欧州の株式を主要投資対象とし、配当利回りに着目して投資し、毎年3月、6月、9月、12月の年4回の決算時に分配金を支払うことを目指す。保有コストである信託報酬は年率0.099%(税込)と、欧州株式に投資する追加型ファンドとして、最も低い水準となっている。

欧州地域を対象とする公募ファンドの数は少ないが、低コストのアクティブファンドとして3月以降も資金流入が続くかどうかに注目している。

資金流出額トップは「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」

2月の資金流出額1位はピクテ・ジャパンの「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」だった。

同ファンドは、主に世界の高配当利回りの公益株に投資するアクティブファンドである。公益企業は、電力やガス、電話、通信など日常生活に不可欠なサービスを提供しており、一般的に景気の良し悪しに左右されず収益基盤が安定しているという特徴がある。

ただ、各国の国債利回りが上昇する中、世界公益株式配当利回りは4.2%と、世界国債利回りの3.5%(2024年2月末時点)との差がなくなってきている。2月末の基準価額の1年騰落率も2.46%と振るわない。また、毎月分配型ファンドなので新NISAの対象ファンドとなっておらず、3月以降も資金流出が続く可能性は高いだろう。

■ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)
基準価額 2467円
信託報酬 1.81%(年率・税込)
純資産残高 8919億円

<騰落率>
1カ月 1.50%
3カ月 -1.35%
6カ月 -0.73%
1年 2.46%

※2月末時点

山下 耕太郎/金融ライター/証券外務員1種

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011

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