兵庫県の指定避難所100施設、南海トラフの津波で浸水恐れ 尼崎、西宮、芦屋、神戸に7割集中

神戸新聞社の調査で浸水の恐れのある指定避難所と分かった西宮市の西宮今津高校(写真右上)周辺=2022年11月撮影

 災害時に被災者が身を寄せる兵庫県内の指定避難所計100施設が、南海トラフ巨大地震による津波で浸水する恐れのあることが神戸新聞社の調査で分かった。西宮市は全体の約3割、尼崎市や洲本市で約2割の避難所が該当する。これらの避難所は発生時に開設できない可能性があり、専門家は「平時から津波時は使用できないことを周知しておくべきだ」と指摘する。

 県の試算によると、南海トラフでマグニチュード(M)9クラスの地震が発生した場合、津波の高さは南あわじ市で最大8.1メートルに達する。津波の到来が予測される県南部の沿岸15市町では、最大6141ヘクタールが浸水。県は浸水想定区域を公表している。

 

沿岸15市町1346施設の7.4%

 指定避難所は災害時に危険がなくなるまで住民が滞在する施設で、切迫した場面で安全を確保する緊急避難場所とは区別される。沿岸15市町には1346施設あり、そのうち浸水想定区域内にある施設数を各市町に尋ねたところ、全体の7.4%にあたる計100施設に上った。うち7割が尼崎、西宮、芦屋、神戸の4市に集中。明石、加古川、たつのの3市、播磨町はゼロだった。

 最大高さ3.7メートルの津波が予想される西宮市は、浸水想定区域内にある避難所が県内最多の39施設。大阪湾や武庫川に面した鳴尾地区は全15施設で浸水の恐れがあり、南部の今津、高須地区でも大半の避難所が浸水区域内だった。

 同市は津波が予想される場合、津波避難ビルに逃げるか、高所での待機、または(市南部を東西に走る)市道鳴尾御影線より北にいったん避難するよう呼びかけているが、津波が収まった後も南部の避難所は機能しない恐れがある。市災害対策課は39施設全てが浸水しても残りの避難所で被災者を収容できるとみており、「南部の市民は住む地域を離れ、鳴尾御影線より北に広域的に避難してもらうことになる」と説明する。

 淡路島3市は計17施設。最大で3メートル近い津波が想定される洲本市中心部では、避難所11施設のうち9施設で浸水の恐れがある。

 事前周知の考えも自治体で異なる。神戸市や姫路市などは津波時に開設されるかどうかを避難所ごとにホームページで公開。一方、尼崎市と西宮市は「市民の不安をあおるのを防ぐため」などとして、一律には公表していない。

 防災行政に詳しい静岡大防災総合センターの岩田孝仁特任教授=防災学=は「災害時の大きな混乱を防ぐため、津波時に開設できない可能性があることを公表しておくべきだ」と事前の情報公開を求める。 (田中宏樹)

 【南海トラフ巨大地震】東海沖-九州沖の海底を走る南海トラフではおよそ100~150年周期で巨大地震が起きており、近い将来の発生が懸念されている。兵庫県内では最悪の場合、津波以外の要因も含めて死者が約2万9100人に上ると見込まれる。県内最短で津波が到達するのは南あわじ市沼島地区で地震の44分後。神戸・阪神間は最短で80~110分程度とされる。

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