優勝から一夜「夢のまた夢」 尊富士(青森・五所川原市出身)、古里へ「県民が一番うれしいと思う」

「記録より記憶」の自筆サインを掲げ、110年ぶり新入幕優勝の喜びを語った尊富士=24日午前、大阪市

 「夢のまた夢です」。大相撲春場所で新入幕力士として1914(大正3)年以来、110年ぶり、初土俵から史上最速の所要10場所で優勝の快挙を成し遂げた青森県五所川原市出身の尊富士(24)=東前頭17枚目、本名・石岡弥輝也(みきや)、伊勢ケ浜部屋=が千秋楽から一夜明けた25日、大阪市で記者会見に臨み、けがを乗り越えたどり着いた頂点の喜びを語った。27年ぶりに郷土力士の栄冠に沸く古里に向け「何より県民が一番うれしいと思う」と笑顔を見せた。

 「気力だけだった」という千秋楽の一番を「自分でも怖いぐらい。内容を覚えていない」と言い、「誰が勝って、負けて、と待つよりも自分の手で賜杯を」との思いだったという。

 その上で「相撲をやっている以上、(優勝は)1回だけでなく何回も。あの景色は何度見ても良い」と決意を語った。

 入門後、背中を追い続け、千秋楽の出場も後押しした部屋の横綱照ノ富士に「『俺の9回より、お前の優勝がうれしかった』と言われて何回も頭をなでられ、初めて恩返しができたと思った」と感慨深げだった。大銀杏(おおいちょう)が結えれば、来場所以降は「夢だった横綱土俵入りを」と望んだ。

 千秋楽に駆け付けた母石岡桃子さん(47)から「よくやったね」とねぎらわれ、「いろいろな思いを感じた。一番の親孝行ができた」と頬を緩ませた。

 尊富士は「喜びを津軽弁で」と問われると、戸惑いながら「さっぱどしたじゃ(すっきりした)」とにっこり。

 一方で「僕も人間なんで甘える部分も多い。正直相撲は好きじゃない」と「本音」も飛び出し報道陣を笑わせた。

 今後に向けて尊富士は「研究されると思うので、僕も研究して強くなって土俵に上がりたい」と飛躍を誓った。

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