症状がさまざまで他の病気との区別がつきにくい 猫に多いがん「リンパ腫」の症状と予防

一度発症すると完治が難しく、猫の命にも関わる病気「リンパ腫」。リンパ腫で見られる症状には、ほかの病気とよく似たものもあるため、注意が必要です。今回は、猫のリンパ腫の症状と予防法について、獣医師の重本仁先生に伺いました。

猫がかかるがんで最も多いリンパ腫

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リンパ腫は血液がんのひとつで、おもに白血球の中のリンパ球が腫瘍化する病気です。リンパ腫は、猫が一番かかることが多い腫瘍といっていいほどで、猫の全腫瘍の3分の1は造血器系腫瘍が占め、そのうちの50~90%をリンパ腫が占めるといわれています。

リンパ腫の多くは悪性腫瘍(がん)で、命に関わる病気です。万が一のときに備えて、リンパ腫の特徴や治療法などを知っておきましょう。

猫のリンパ腫のタイプと症状

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リンパ腫は、発生部位によって以下7つのタイプ(型)にわかれ、それぞれ症状が異なりますが、共通しているのは「元気消失」「食欲不振」「体重減少」です。発生部位や進行具合によっては、体表リンパ節の腫れ(触るとしこりがある)が現れることもあります。症状や体に触れた感触だけでは、ほかの病気と区別がつかないことも。

猫のリンパ腫で発症頻度が高いのは、1. 消化器型。3. 前縦隔型は、猫免疫不全ウイルス陽性の若年猫で発症するケースが数多く報告されています。

リンパ腫の発生部位(タイプ)ごとのおもな症状・特徴

1. 中枢神経型…下半身麻痺など
2. 鼻腔・眼窩型…呼吸困難、鼻汁、鼻出血、顔面変形など
3. 前縦隔型(胸腺・縦隔・肺※)…呼吸困難、嘔吐、嚥下困難など
4. 皮膚型…強いかゆみ、脱毛、皮膚の硬化、潰瘍、丘疹など
5. 多中心型(下あご・首元・脇の下・鼠径部・膝裏)…体表リンパ節の腫れ、嘔吐、下痢など
6. 消化器型…嘔吐、下痢など。一般的な消化器症状と似ているため診断が難しい
7. 腎臓柄…沈うつ、多飲多尿など、急性腎臓病に似た症状が出る

※胸腺は胸骨の裏にある臓器。縦隔は左右の肺の間にある空間で、部位によって「前縦隔」「上縦隔」などに分類される。

猫のリンパ腫は定期健診で早期発見を

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予防法のないリンパ腫から猫を守るためには、早期発見・早期治療しかありません。日ごろから猫の体調に気を配り、体にしこりがあったり、気になる症状があったりする場合は、すぐに動物病院を受診し、定期的な健康診断も必ず行いましょう。

また、猫免疫不全ウイルスなど、特定のウイルスに感染した猫がリンパ腫にかかりやすいことを考えると、完全室内飼育を徹底し、感染や発症のリスクを抑えることも大切です。

リンパ腫は嘔吐や下痢、強いかゆみや体重減少など、全身に影響をおよぼす病気です。愛猫をリンパ腫から守るためにも、定期的に健康診断を受けて早期発見することはもちろん、日ごろからウイルスに感染しないための対策を徹底的に行うようにしましょう。

お話を伺った先生/重本仁先生(王子ペットクリニック院長)
参考/「ねこのきもち」2024年2月号『一番多いがん もしも愛猫がリンパ腫にかかったら…』
文/宮下早希
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。

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