【ライブレポート】Dannie May、結成日に5周年アニバーサリーライブ開催「5年前からここまでみんながつなげてくれた」

すべての写真(11)を見る

Dannie Mayが結成日の3月18日に渋谷クラブクアトロで5周年のアニバーサリーライブ「Give Me Five」を開催した。ギターロックやダークポップ、時にフォーキーな楽曲までをJ-POPに落とし込むジャンルレスな音楽性。ひねりが効いていつつ、生きることに真剣な視点を含む歌詞などベーシックな部分を保ちながら、表現のアウトプットを拡張してきた5年を存分に体現したライブとなった。

暗転した会場に強烈な赤いバックライトが警告のように照射される中、マサ(Vo/Gt)、田中タリラ(Vo/Key)、Yuno(Vo/Kantoku)とサポートドラマー成瀬太智が登場し、エレクトロスウィングな「灰々」でスタート。

3人それぞれのボーカル表現も、コーラスの完成度も明らかに上がっているし、マサのギターカッティングも存在感を増している。シームレスに「笑わせらぁ」につなぎ、サビの“バイバイ日々の劣等に、バイバイ日々の喧騒に”では早くもファンが吐き出したかった思いが乗ってフロアが揺れる。

畳み掛けるように放つ「玄ノ歌」では“ラッキーボーイ”のシンガロングが炸裂。Yunoのアクションも激化、フェミニンなイメージだったタリラのフィジカルも上がっている印象。この冒頭のブロックのたたみかけは凄まじく、続く「黄ノ歌」まで、ノンストップミックス状態に。

田中タリラ(Vo/Key)

マサが軽く「お待たせしました、Dannie Mayです」と挨拶を挟む程度で、すかさず4分キックのビートが始まる前のめり感。Yunoが「おまえたちが聴きたかった曲をやるぜ!」と叫び、「針よ墜とせぬ、暮夜の息」へ。東京の夜の景色、刹那の感情、そういったものを絶妙な韻を踏みながらメロディに乗せていくDannie May節万歳な世界観を味わいながら踊るタームにこの曲から突入した。

マサのテンションコードのカッティングが響くと、Yunoがメインで歌う「待ツ宵」。タリラのクラビネットの響きも相まってファンク/ブルース色濃いグルーヴが生まれるが、いい意味で歌謡的なキャッチーさがメロディやコーラスに見え隠れするのがいい。特徴的な“アアアアアアアア~”のコーラスもジャンルを飛び越えてくる。

同じくマイナーチューンかつ東京という街が主題の最近のナンバー「東京シンドローム」へのつながりもナイスだ。マイナーチューンとはいえ、ホラー要素も音でコミカルに加え、サビで解放される構成はライブでさらに威力を増していた。

マサ(Vo/Gt)

同じくホラー調でタリラがメインで歌う「異形」につないだのも地続きなイメージで、低音が効いたシンセベースがダークな世界観を押し広げる。音源とはまた違う生バンドの体感はちょっとナイン・インチ・ネイルズを思い出させるような奥行きだ。

昨年12月リリースのEP「青写真」からの2曲だが、これまでのダークなナンバーからさらに進んだ立体感をライブで実証していた。さらに「天国と地獄」のフレーズが断続的に響き、イントロとなって「適切でいたい」に突入。ホラー感溢れるムードがこのブロックを最高潮の盛り上がりに導く。Yunoのシアトリカルなアクションもハマりにハマっていた。

Yuno(Vo/Kantoku)

9曲をほぼノンストップでたたみ掛けただけでなく、無駄な瞬間を削ぎ落とそうとするこの日の3人の前のめりな姿勢は明らかにこれまでと違う。マサが「ノンストップでやってまいりましたが、いかがだったでしょうか」と問い、Yunoが「5年前に始めて、ここまでいろんな時代の曲をやってきたけど、ほんとにいろんな曲をやってきたなと思って」と、Dannie Mayの特性かつ、この日のテーマについても述べる。かなり食い下がり気味のフロアに向けて、タリラだけは「みんなバテてない?寝てる?」と声をかける。このバランスもいかにもDannie Mayだ。

マサがファンに好きな曲を問いかけると見事にバラバラなのも彼ららしい。その回答を受け、Yunoが「全部ジャンル違うじゃん。でも俺らは音楽というエンタメで出会った3人だから」という。納得である。そして「5年前の3月18日に始まった日から、ここまでみんながつなげてくれたと思ってる。でもまだ満足してない」と、感謝と野望を同時に明らかにした。5周年に際する言葉でもあり、ライブがさらにギアアップする宣言だ。

折り返しはバンドの特徴が際立つナンバーが続く。タリラのダウナーなエレクトロチューン「If you イフユー」でグッとインナーに誘い込み、一転、ロックバンドのカタルシスでアップリフトする「3分半の反撃」が凱歌のように響き、続く「ぐーぐーぐー」ではマサもタリラもハンドマイクで縦横無尽に盛り上げる。

間違いなく初見のオーディエンスでも乗れる曲の強さと敷居の低さの両立。痛快なものを見たとき、笑うしかなくなるが、まさにそれが頻繁に起きるライブなのだ。

アウトロからインタールードとメンバー紹介を挟み、タオル回しと“フッフー!”のシンガロングが巻き起こる「ええじゃないか」も、グッとフィジカルの強さが増して、ロックバンドのライブ入門編といった趣だ。続く「KAMIKAZE」は言葉数の多いメロディを乗りこなすマサのみならず、3人で構成していく流れが痛快。Yunoの煽りに食い下がってジャンプするオーディエンスのタフさも序盤より強度を増しているほど。

実際、このキラーチュンの連投は尋常じゃないテンションなのだが、フロアが返す熱量がステージにも還流していて、うねりは止まらない。促されるまでもなく、大きくなるハンズクラップに乗ってスタートした「OFFSIDE」、先ほど好きな曲の答えにも挙がっていたからか、マサが「お待たせ!「カオカオ」」と、タイトルコールしての「カオカオ」はここまでのダンサブルなマイナーチューンの連投にバッチリつながるが、さらに精度を増したアレンジや“ディンディンディギディギディギ〜”など、トリプルボーカルのハーモニーがスリリング。特に複数で放つメロディと言葉のユニークさは他のバンドにない醍醐味だ。余力を残すつもりが全くない3人。猛烈に頭をシェイクしていたマサは勢い余ってサングラスを飛ばしていた。

「バカみたいに駆け抜けてきましたが、まだ力残ってますか?特別な5周年にしたいんで、みんながあの日、人生でいちばん声出した日になるように声聴かせてください!」と、シンガロングを促した「コレクション」は繰り返すたびに大きくなる“ウォウオオ~”のシンガロングがここまでたどり着いた3人を祝っているみたいだ。マサが自分を鼓舞するように「不器用に何千何万回だろうとやり直せるから」と紡いだであろう歌詞が、受け取った人に広がっていく景色は純粋に素晴らしかった。

演奏を終えて「今まででいちばんすごい「コレクション」だった」と、少し驚いた表情を3人とも見せていたことに、フロアも幸せな気持ちで満たされる。駆け抜けてきた本編のラストは気持ちにスッと入ってくる本音を歌うバラード「ユウヤケ」。ネガティヴな感情も、トリックスター的なポップネスも含んだセットリストを駆け抜けてきたからこそ、なおのこと沁みるエンディングになった。

アンコールを求める声はこの日は誰ともなく「コレクション」のシンガロングがどんどん広がり、メンバーが再登場しても終わらず、タリラが指揮をとり、ドラムで終わるという流れに。6年目にステップを進めるように「めいびー」を軽快に放ち、初めてこの3人で作ったという「今夜、月のうらがわで」で緩く揺れさせる。ミラーボールに照らされるフロアはやり切った表情に溢れていた。

最後にマサが「今年はライブももっとやって、曲もたくさん書いていきます!」と宣言し、お馴染みの初期ナンバー「御蘇-Gosu-」をラストにセット。3声のユニゾンコーラスが、これまで以上にここにいるすべての人の未来を照らすように聴こえたのは錯覚じゃなかったはずだ。

なお、7月には初の東名阪ツアー「フライド・エッグ・バケーション」を開催。4月10日には配信シングル「ふたりの暮らし」をリリースすることも発表した。

Text:石角友香 Photo:Ayato

<公演情報>
Dannie May 5th Anniversary One Man Live「Give Me Five」

2024年3月18日(月)渋谷CLUB QUATTRO

セットリスト1.灰々2.笑わせらぁ3.玄ノ歌4.黄ノ歌5.針よ墜とせぬ、暮夜の息6.待ツ宵7.東京シンドローム8.異形9.適切でいたい10.If you イフユー11.3分半の反撃12.ぐーぐーぐー13.ええじゃないか14.KAMIKAZE15.OFFSIDE16.カオカオ17.コレクション18.ユウヤケEN1.めいびーEN2.今夜、月のうらがわでEN3. 御蘇-Gosu-

<ツアー情報>
Dannie May ONE MAN TOUR「フライド・エッグ・バケーション」

7月14日(日) 大阪・Music Club JANUS
OPEN 17:30 / START 18:00

7月15日(月・祝)名古屋・CLUB UPSET
OPEN 17:30 / START 18:00

7月18日(木)東京・WWW
OPEN 18:15 / START 19:00

オフィシャル最速チケット先行:4月1日(月) 23:59まで受付中
https://w.pia.jp/t/danniemay-tour24/

<リリース情報>
New Digital Single「ふたりの暮らし」

2024年4月10日(水) 配信リリース

すべての写真(11)を見る

© ぴあ株式会社