【大相撲】「大尊時代」に高まる期待…優勝争い演じた若き2力士、写真撮影でかわされた会話の“中身”

優勝した尊富士(左)は殊勲、敢闘、技能の全賞を受賞、大の里は敢闘賞と技能賞を受賞した(写真・JMPA/馬詰雅浩)

大相撲大阪場所は、新鋭の尊富士(たけるふじ 前頭17)の劇的な優勝で幕を閉じた。

新入幕力士の優勝は110年ぶりで、年6場所制になってからは初。初土俵から所要10場所での幕内優勝は、史上最速。これまでの記録、元横綱・輪島の所要15場所は、幕下付け出しでのデビューのもので、前相撲から一気に上り詰めた尊富士のスピードには驚くばかりだ。

また、殊勲賞、敢闘賞、技能賞の三賞を同時に受賞したのも、2000年の琴光喜以来という、まさに記録づくめの初優勝だった。

だがもうひとり、忘れてならないのが、大の里(前頭5)の存在だ。

14日目終了時点で、尊富士は2敗。それを星ひとつ差の3敗で追う大の里という展開。優勝争いはこの2人に絞られていた。

相撲ファンだけでなく、多くの注目を集めた千秋楽。前日の大怪我をおして強行出場した尊富士が、豪ノ山を下して自力で優勝を決めたものの、大の里なくしては、大阪場所でのこの盛り上がりはなかったはずだ。

かりに大の里が優勝していれば、所要6場所、入幕2場所めでの初優勝。出世スピードに髪の伸びるのが追いつかず、ちょん髷どころか、ざんばら髪での優勝は前例がない。こちらも記録づくめの優勝となっていた。

大の里は11勝4敗で、敢闘賞と技能賞のダブル受賞。尊富士と大の里、新鋭2人で三賞を独占した。

千秋楽の取組終了後、三賞授賞者による写真撮影では、この2人が並んでなにやら言葉を交わす場面も。

「大の里のほうから『おつかれっす』と尊富士に声をかけ、何やら小声で話しかけていました。それに対して、尊富士は笑顔で『気合だけ』と答えていたので、おそらく怪我をした脚は大丈夫なのかを心配して聞いたのでしょう。

2人は相撲少年時代から顔を合わせており、尊富士のほうが1学年、上です」(相撲ライター)

尊富士は青森県五所川原市出身で、中学卒業後は鳥取城北高校に進学。名門の日本大学相撲部から伊勢ヶ濱部屋に入門。

大の里は石川県津幡町出身で、中学から新潟県の学校へ“相撲留学”。日本体育大学時代は2年連続アマチュア横綱の称号を手にし、二所ノ関部屋に入門した。

「2人は高校・大学時代に対戦があり、2勝2敗だったそうです。

大の里は大学時代にタイトルを獲得し、幕下10枚目格付け出しでデビュー。一方の尊富士は高校大学と怪我に泣かされ、タイトルを取ることができず、前相撲からのスタートでした。

新入幕は大の里が一場所先になりましたが、尊富士がそこに追いつき、追い越していったというわけです。24歳の尊富士と、23歳の大の里。まだまだ伸びしろは十分で、今後の大相撲を牽引する存在になりそうです」(同前)

SNSには

《今場所を見て、いつの日か大の里と尊富士の『大尊時代』が来ると感じた!》

《ここからお互い切磋琢磨して “尊大時代” を築いて欲しい!》

など、かつての「栃若」(栃ノ海・若乃花)や「輪湖」(輪島・北の湖)、「曙貴」(曙・貴乃花)のような一時代を築くことを期待する声があふれている。

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