キム・ソヒョン、韓国映画賞6冠の衝撃作『ビニールハウス』を語る“現実とは切り離すことができない、様々な感情が描かれている”

ムンジョンという人物の中に過去の自分を重ねた

――本作の脚本を読んだ感想。テーマに対する印象を教えてください。

キム・ソヒョン:私自身と重なる部分があり、他人の物語ではなく自分の物語のように感じました。ムンジョンという人物の中に過去の自分と重なるところがあったのです。演じるのは簡単ではありませんでしたが、人生を生きていく上で誰の身にも起こりうることを描いた作品だと思いました。

――本作は非常に重い社会問題がテーマとなっていますが、キム・ソヒョンさんが事前に調べたことや読んだ記事などはありますか?

キム・ソヒョン:今回の役作りのために準備したことは少なく、「こうしなければならない」というものはありませんでした。実際自分もムンジョンと重なるような人生を生きてきたので、すでに演じる準備はできていたんです。

――ムンジョンは罪を犯していますが、根っからの悪人ではなく誰でも一歩間違えばこの様な事態になり得ると思います。ムンジョンというキャラクターをどう捉え、どう演じようとしたか。

キム・ソヒョン:ムンジョンという女性の人生を見つめてみると、極限におかれた人物と言えるかもしれません。私も演技をするときは極限に自分を追い込むので、そういった意味でも彼女と重なる部分がありました。他の登場人物たちも映画の中だけの人々とは思えなかったんです。本作には普段私たちが日常の中で感じている、現実とは切り離すことができない、様々な感情が描かれていると思います。ムンジョンは自傷行為をしますが、ある意味それが彼女の自己表現であると考えています。

もしムンジョンに出会ったら、手を取って抱きしめてあげたい

――次世代を担うイ・ソルヒ監督とのお仕事はいかがでしたか? 印象に残っていることなど。

キム・ソヒョン:イ・ソルヒ監督はリーダーシップがあり、現場での態度からも本作が長編デビュー作だとは全く思えませんでした。印象に残っているのは自分自身を叩くシーンを撮影した時のことです。監督が「大丈夫ですか。これ以上見ていられない!」とおっしゃっていて……。ご自身が書かれたものなのに、監督本人がそうおっしゃっていたことを思い出しました(笑)。

――とにかく展開にハラハラしましたし、悲しくやりきれないお話だとも思います。ソヒョンさんが感じる本作の本質と、観客に伝えたいメッセージは?

キム・ソヒョン:この作品では、人間が自らの死を選択することなどの社会的な問題が描かれていて、それは日頃ニュースなどのメディアで触れられている出来事でもあります。私個人としては、このような問題に対してやり切れない気持ちと私自身何ができるだろうという気持ちを抱えながら仕事をしているので、ムンジョンのようなキャラクターと出会えたときには、心からその人物に思いを寄せて、希望を伝えていきたいという気持ちで臨んでいます。もしムンジョンに出会ったら、手を取って抱きしめてあげたい、心からそう思える人物でした。

――今後どの様な作品、役柄にチャレンジしたいですか?

キム・ソヒョン:私は岩井俊二監督の『Love Letter』が大好きなんですね。『Love Letter』のような初恋を描いた作品に出演してみたいなと思っています。

取材:中村梢

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