「組織として検証を」大川原化工機冤罪事件 元役員が警視庁に告発状提出

警視庁への告発状提出を終えて囲み取材に応じる高田剛弁護士と島田順司さん(3月25日都内/弁護士JP編集部)

機械メーカー「大川原化工機」の社長らが警視庁公安部に逮捕された冤(えん)罪事件をめぐり、大川原化工機と元役員が25日、警視庁に告発状を提出した。

取調官と上司が告発対象

横浜市の機械メーカー「大川原化工機」の社長らは2020年、不正輸出の疑いで警視庁公安部に逮捕・起訴されたが、その後、起訴が取り消された。

社長らが捜査の違法性を訴え損害賠償を求めた裁判で東京地裁(23年12月)は、警視庁の捜査員が同社元役員の島田順司さん(70)に依頼された調書の修正を行わず署名させたことを違法と認め、都と国に賠償を命じた=原告、東京都の双方が控訴=。

今回の告発は、島田さんの取り調べを行った取調官(警部補)と捜査を指揮した上司(警部)の2名が対象。

地裁判決によれば、取調官(警部補)は島田さんが容疑を認めたとする供述調書を作成。容疑を否認した島田さんから修正を求められ、調書を作り直したが、社長との共謀を認める内容になっていた。これに気づいた島田さんが抗議し、取調官は2通目の調書をシュレッダーで破棄した。

公権力を誤って使えば人を死に追いやる

大川原化工機の代理人弁護士を務める高田剛弁護士は「弁解録取書(調書)が2つあるというのは通常あり得ないこと。このままではいけないと考えた取調官が1つをなかったことにして、逃げ切ろうとした」と指摘。

その上で、一度作成された公用文書をシュレッダーで破棄した行為が「公用文書毀棄罪」。後に「誤って破棄してしまった」とする報告書を作成・使用した行為について「虚偽有印公文書作成・行使」に当たるとし告発に至ったと説明した。

警視庁への告発状提出後、囲み取材に応じた島田さんは「個人を罰してほしくて告発状を出したわけではありません。組織として事件を検証していただき、ぜひこのようなことが起きないようにしてもらいたい。同時に、彼ら(警察・検察)が持ってるその公権力を誤って使えば、同僚が亡くなりました(※)が、人を死に追いやることもあるんだと、きっちり認識してほしいと思います」と話した。

※同社の顧問だった相嶋静夫さん。勾留中に見つかった胃がんで、起訴取り消しの報を聞くことなく亡くなった。遺族らは、拘置所が適切な検査や治療を行わなかったことが死期を早めたとして国に賠償請求訴訟を提起している。

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