25歳会社員、夫が体調不良で退職したこともあり貯金がまったくなくなってしまいました

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えします。今回のご相談者は、結婚費用や夫の退職などで貯金がなくなってしまったという25歳の会社員女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

将来、子どもも家も欲しいですが、このままでやっていけるのか不安です

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。 今回のご相談者は、結婚費用や夫の退職などで貯金がなくなってしまったという25歳の会社員女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

相談者

わきちさん 女性/会社員/25歳 愛知県/借家

家族構成

夫(27歳)

相談内容

一昨年結婚しましたが、直後に夫がメンタル不調で退職したこと、結婚資金が想定以上にかかったことにより貯金がまったくなくなってしまいました。両親から170万円ほど借りていますが、今年春には完済予定です。 将来、子どもも家も欲しいですが、このままでやっていけるのか不安でたまりません。今後のお金の貯め方や将来設計について何かアドバイスをいただけるとうれしいです。 家計は夫婦別財布で夫は税金を除いた給与の半分(16万円)を入れてもらっています。残り半分で夫自身の奨学金や医療費、サブスク費用などを払ってもらい、今後自身に何かあった時のために貯めておくよう伝えています(毎月、趣味や余暇の費用を抜いても5万円程度は貯まるはずです)。夫の体調が心配のため、これ以上生活費などを受ける予定は現状ありません。

家計収支データ

わきちさんの家計収支データは図表のとおりです。

相談者「わきち」さんの家計収支データ

家計収支データ補足

(1)家計の流れ ◎生活費について 夫:手取り35万円から生活費として共同財布に16万円 相談者:手取り25万円から生活費として共同財布に13万円 それぞれの支出の詳細は以下の通りです。 ◎共同財布からの支出……合計25万5000円 住居費/12万円 食費/3万円 電気ガス水道料金/1万5000円 雑費/2万円 親への返済/7万円 ◎夫の財布からの支出……合計14万5000円ぐらい 通信費/3500円 保険料/3000円 住民税/2万円 奨学金/1万円 医療費/5000円 交際費・娯楽費/5万円程度 貯蓄/5万円 ◎相談者の財布からの支出……合計9万円 通信費/3500円 保険料/3500円 薬代/3000円 住民税/1万円 交通費/2万円 娯楽費/5万円 ◎毎月の貯蓄額について 毎月の貯蓄額は共同財布からの貯蓄と相談者の財布からの貯蓄の合計額です。 ・共同財布から4万~5万円 ・相談者の財布から現金3万円、NISAの積立5000円 (2)ボーナスの使い道 夫の前職はボーナスがなかったので、私のボーナスのみで50万円程でした。直近では親への返済や親戚の冠婚葬祭の費用に使用しました。 (3)保険について 夫/ ・医療保険(10年間、入院5000円、他に障害特約5万円、入院一時金10万円、がん特約)=毎月の保険料3000円 相談者/ ・医療保険(10年間、入院5000円、他に障害特約5万円、入院一時金5万円、がん特約、女性疾病入院特約)=毎月の保険料3500円 (4)夫の働き方について いったん退職したのち再就職しました。仕事に支障はありません。 (5)夫の奨学金について 毎月1万円を返済しています。完済時期は正確にはわかりませんが、40代までかかるようです。 (6)貯蓄について 私名義の口座に共通のものとして貯めているほか、それぞれ個人的にも貯蓄口座を持っています。貯蓄の10万円は共通の口座のものです。 (7)投資について 私名義のNISAの積立で、毎月5000円積み立てています。生活が落ち着いたら1万~3万円程度増額予定です。 (8)住民税の支払いについて 夫婦共に23年に転職したためです。来年以降は給与から天引きされます。そのため私の手取りは23万円、夫の手取りは32万円になると思います。 (9)娯楽費について 夫の娯楽費については、しばらくは4万~5万円かかるが2、3年後には減額できます。代わりに私の娯楽費については毎月3万円程度に収めることが可能です。

FP深野康彦の2つのアドバイス

アドバイス1:世帯全体の収支を整理し、今後3年間で貯蓄のペースを作ること アドバイス2:家計、貯蓄の情報共有をすること。各人の支出のブラックボックスはNG

アドバイス1:世帯全体の収支を整理し、今後3年間で貯蓄のペースを作ること

夫婦の収入、支出をそれぞれが管理されているため、全体の家計が見えにくくなっているようで、当初いただいた家計データとは少し違っているようです。 世帯での収支を整理すると、住民税天引き後の収入は55万円。支出は生活費の25万5000円、夫支出が14万5000円、妻の支出が9万円で合計49万円です。収支残りは6万円となり、これが実質的な貯蓄額となります。現在は親への返済もあり、すぐに毎月の貯蓄額を増やすことは難しいかもしれませんが、まだ夫婦2人の生活で子どもにかかる費用がない今、最大の貯めどきであることを認識しましょう。 支出は住居費や食費などは削ることができませんが、それ以外は、聖域はないと思って生活費に見直し、それぞれの支出についてしっかりと管理をなさってください。親への返済、それぞれの住民税で10万円は浮くわけですから、毎月少なくとも15万円は確実に貯蓄できるはずです。これを給与から先取りして残ったお金40万円で共通の生活費、それぞれの支出をまかなうようにしましょう。 毎月15万円貯蓄できるようになれば、年間で180万円です。これにボーナスの半分50万円を貯蓄できれば年間230万円です。 まずは、この先3年間で貯蓄ペースを掴むこと、世帯での支出管理を整理することから始めてください。

アドバイス2:家計、貯蓄の情報共有をすること。各人の支出のブラックボックスはNG

年間230万円、3年で690万円。今ある貯蓄と投資分25万円を加えて715万円。これで次のステップに進めることになります。子どもの教育費や住宅購入は3年後の貯蓄次第と言えるでしょう。その時点で、もう一度、ご相談をお寄せください。 結婚なさったばかりで家計が安定していないのは仕方ありませんが、お財布が2つの家庭は、双方が貯蓄しているはず、と思ってしまい、世帯全体での貯蓄額が見えにくくなりがちです。名義はそれぞれでも構いませんが、世帯全体の貯蓄額は情報共有しておくことが大切です。 この先、子どもが生まれたら、どちらのお財布から教育費を出していくのか、その都度対応するのではなく、共有財産として貯蓄をしておくことが将来の安心につながります。 NISAの積立も少額ですので、続けるのは構いませんが、現預金が10万円の段階で始めることではありませんし、増額する必要もありません。まずは、手元の現預金を増やすことが先決です。3年間はひたすら定期預金(給与振込口座での自動積立がベストです)などで貯蓄額を増やすことに専念してください。 もうひとつ、ご主人の奨学金ですが、40代まで返済が続くとのこと。毎月1万円の返済はそれほど負担に感じていないのかもしれませんが、今後、子どもが生まれ、住宅購入を検討するようになった際には、奨学金は繰り上げ返済で完済してしまったほうがいいでしょう。交際費・娯楽費で月10万円の支出がありますが、奨学金を繰り上げ返済することが優先ではないでしょうか? 奨学金とはいえ、借金は借金です。負の資産は早めにゼロにしておくようにしましょう。 世帯収入は年齢から考えてもかなり多いほうでしょう。今から貯蓄ぐせを身につけ、夫婦2人で頑張ってほしいと思います。家計のルールを2人で考え、ブラックボックスを作らないことが今の段階では大切ですよ。

相談者「わきち」さんから寄せられた感想

深野先生、アドバイスいただきありがとうございます。これから夫婦で情報共有し、まずは3年しっかり貯蓄を増やせるよう頑張っていきます。 教えてくれたのは……深野 康彦さん マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。 取材・文/伊藤加奈子 (文:あるじゃん 編集部)

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