『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』北米で前作超えの出だし 注目の新作ホラーも

「やはり」というべきか、それとも「予想外」というべきか。3月22日~24日の北米映画興行は、人気SFアクションコメディシリーズの最新作『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』が制した。3日間の興行収入は4520万ドル、事前の予測を上回る成績だ。

1984年の第1作以来、今年生誕40周年を迎える『ゴーストバスターズ』は、オリジナル版からのファンだけでなく若い世代の新たな観客も巻き込んで展開中。ソニー・ピクチャーズによると、2016年の女性リブート版『ゴーストバスターズ』を含むフランチャイズ全5作の累計興行収入は10億ドルを突破した(2016年版は世界観を共有しないリブート作品)。

前作『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2021年)は、コロナ禍からの回復のさなかに公開され、オープニング興行収入4400万ドルを記録。今回の『フローズン・サマー』はこれをしのぐ数字となった。前作ほどのヒットにならない懸念もあったが、ソニーはテレビCMや企業タイアップなどを大量に展開、SNSでも幅広い世代に露出して、潜在的な観客にうまく訴求した。

本作は『アフターライフ』に続き、ポール・ラッド、キャリー・クーン、マッケナ・グレイス、フィン・ウルフハードの新世代キャストを中心とする物語。オリジナル版からビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、アニー・ポッツらも復帰し、全員で世界を凍らせる脅威のゴースト“ガラッカ”に挑む。

海外25市場では1640万ドルを記録し、現時点での全世界累計興収は6160万ドル。ソニーによると前作比115%のスタートだという。

むろん、まったく懸念がないわけではない。製作費は1億ドルとあって、黒字化までの道のりはまだ遠いのだ。前作は製作費7500万ドルに対し、世界興収2億433万ドルを記録していたが、この成績を超えられるかがひとつのポイントだ。Rotten Tomatoesでは批評家スコア43%に対して観客スコアは85%と良好で、口コミ効果も期待できる。

ただし、いまやフランチャイズ作品は2週目以降の数字の変化が大きいおそれもあるほか、『ゴーストバスターズ』は興行のカギとなる新規ファンの増加度が見えづらい。ソニーは春休み興行の追い風を受ける狙いだが、次の週末は『ゴジラxコング 新たなる帝国』との対決になるのだ。日本公開は3月29日、国内ではどのように受け止められるか?

週末ランキングの第2位は、前週に続き『デューン 砂の惑星PART2』。前週比-38.3%と粘り強い興行を続け、北米興収は2億3335万ドル、世界興収は5億7435万ドルとなった。第3位は、公開3週目で首位を譲った『カンフー・パンダ』第4作『Kung Fu Panda 4(原題)』。北米興収は1億3323万ドル、いよいよ中国公開も始まって世界興収は2億6817万ドルと上々だ。

『ゴーストバスターズ』『デューン』『カンフー・パンダ』の善戦により、今週末の北米映画市場は累計興行収入1億570万ドルを記録。前週比121%と上昇したほか、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023年)が公開された前年同週比も91%と悪くない成績だ。

そのほか今週は、『マダム・ウェブ』や大ヒット恋愛コメディ『Anyone But You(原題)』と話題作の続くシドニー・スウィーニー主演のホラー映画『Immaculate(原題)』が第4位に初登場。2354館で536万ドルという成績は渋いように見えるが、製作費1000万ドル以下&宣伝・広報費も抑え目の低コストで、若い女性客の人気もつかみ、ビジネス的には堅実なスタートだという。

IMMACULATE - Official Trailer
本作はスウィーニー演じる敬虔なシスター・セシリアが、美しいイタリアの片田舎にある修道院を訪れ、新居に隠された秘密を知っていく物語。セシリアの旅は恐ろしい悪夢へと発展していく……。監督は『観察者』(2021年)でもスウィーニーとタッグを組んだマイケル・モハン。

Late Night With the Devil - Teaser Trailer
注目は第6位に初登場した、同じくホラー映画の『Late Night With the Devil(原題)』。1977年10月、深夜の人気トーク番組で生放送中に発生した怪異を記録した……という設定のフェイクドキュメンタリー作品で、全編がほぼリアルタイムで展開する。

本作は1034館で280万ドルを稼ぎ、配給のIFC Filmsとしては過去最高のオープニング記録を達成。監督・脚本はオーストラリア出身のコリン&キャメロン・ケアンズ。トーク番組の司会者役として主演を務めたのは、『アントマン』シリーズや『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021年)、『オッペンハイマー』などの名バイプレーヤー、デヴィッド・ダストマルチャンだ。

なお、残念ながら現時点で『Immaculate』『Late Night With the Devil』の日本公開は未定。それどころか、ランキングのトップ10では『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』『デューン 砂の惑星PART2』と第10位『ボブ・マーリー:ONE LOVE』の3作以外はすべて日本公開が決まっていない。大手スタジオが関与しない中規模・小規模映画は、今後ますます日本公開のハードルが上がっていくのだろうか?

北米映画興行ランキング(3月22日~3月24日)
1.『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』(初登場)
4520万ドル/4345館/累計4520万ドル/1週/ソニー

2.『デューン 砂の惑星PART2』(→前週2位)
1760万ドル(-38.3%)/3437館(-410館)/累計2億3335万ドル/4週/ワーナー

3.『Kung Fu Panda 4(原題)』(↓前週1位)
1679万ドル(-44.3%)/3805館(-262館)/累計1億3323万ドル/3週/ユニバーサル

4.『Immaculate(原題)』(初登場)
536万ドル/2354館/累計536万ドル/1週/NEON

5.『Arthur the King(原題)』(↓前週3位)
436万ドル(-42.9%)/3003館(変動なし)/累計1463万ドル/3週/ライオンズゲート

6.『Late Night with the Devil(原題)』(初登場)
283万ドル/1034館/累計283万ドル/1週/IFC Films

7.『Imaginary(原題)』(↓前週4位)
280万ドル(-49.6%)/2513館(-605館)/累計2362万ドル/3週/ライオンズゲート

8.『Love Lies Bleeding(原題)』(↓前週6位)
158万ドル(-36.5%)/1828館(+466館)/累計568万ドル/3週/A24

9.『Cabrini(原題)』(↓前週5位)
142万ドル(-49.2%)/1765館(-1085館)/累計1616万ドル/3週/Angel Studios

10.『ボブ・マーリー:ONE LOVE』(↓前週7位)
110万ドル(-51.7%)/1266館(-1006館)/累計9531万ドル/6週/パラマウント

(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2024年3月25日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)

参照

https://www.boxofficemojo.com/weekend/2024W12/
https://variety.com/2024/film/box-office/ghostbusters-frozen-empire-box-office-opening-weekend-1235950537/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/ghostbusters-frozen-empire-box-office-opening-1235858952/
https://deadline.com/2024/03/box-office-ghostbusters-frozen-empire-1235865730/
https://deadline.com/2024/03/late-night-with-the-devil-ifc-films-indie-film-box-office-1235866889/
(文=稲垣貴俊)

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