事件記録廃棄、再開は今秋以降 特別保存の適否判断に「一定の時間」 最高裁第三者委が初会合

事件記録の保存について話し合う第三者委員会の初会合に臨む委員ら=25日午後、東京都千代田区、最高裁

 神戸連続児童殺傷事件など、重大少年事件の記録が各地で保存されず廃棄されていた問題を受け、最高裁が設置した「第三者委員会」の初会合が25日、非公開で開かれた。今後、少年事件に限らず、民事や家事も含めた事件記録の保存について助言する。全国の裁判所は記録の廃棄を停止しているが、会合後に説明した最高裁は、各裁判所が特別保存(永久保存)の適否を判断する時間を要するため、廃棄の再開は今秋以降になる見通しを示した。

 今年1月に任命された第三者委の委員は、中島康比古・国立公文書館統括公文書専門官や、深見敏正弁護士(第一東京弁護士会、元東京高裁部総括判事)など6人。最高裁によると、委員長には高橋滋・法政大法学部教授が選ばれた。

 第三者委は、外部から要望を受けたのに裁判所が特別保存にしなかった事案の二重チェックをする役目を担う。初会合での検討はなく、各裁判所の選定作業に時間が必要として、次回会合は秋以降と決まった。また、廃棄が留保された過去の膨大な事件記録が存在するため、「主要日刊紙2紙以上の掲載」という基準と照合する時間もかかり、次回会合までに廃棄の再開はないとした。

 一方、第三者委は「一定の重大な社会事象」に関連する記録の保存を提言する役割もある。最高裁が公表した調査報告書は、社会事象の例として「大震災や疫病等」を挙げており、元日に起きた能登半島地震に関する事件記録が対象となる可能性がある。最高裁によると、初会合ではこの社会事象について「どのようなプロセスで検討するのか」との発言があったという。

 第三者委は、問題を受けた再発防止策の柱の一つとして設置された。(霍見真一郎)

 【裁判所の事件記録廃棄問題】1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件など、重大な少年事件の記録が各地の家裁で廃棄され、特別保存(永久保存)が機能していなかった問題。少年審判は非公開のため、事件記録が失われると審議過程が検証できなくなる。最高裁は、特別保存の枠組みを内規に記していたが、守られていなかった。問題を受け、最高裁は全国の裁判所に対し、民事、家事事件も含めた全ての記録の廃棄を一時停止するよう指示。史料的価値の高い事件記録を「国民共有の財産」として保存すると定めた新規則を作った。

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