富山の映画アーカイブ化 高志の国文学館就任1年・室井滋館長

就任1年を前に抱負を語る室井館長=25日、富山市の高志の国文学館

  ●富山新聞社単独インタビュー 若い世代に「間口広げたい」

 昨年4月に富山県の「高志の国文学館」の館長となった県出身の女優で、富山新聞に連載「瓢箪(ひょうたん)なまず日記」を執筆している室井滋さんが25日、就任1年を前に本紙の単独インタビューに応じた。室井さんは、富山ゆかりの映画について、関連素材を収集、保管するアーカイブを2年計画で進め、将来的には作品の上映会を開催したい意向を明らかにした。室井館長は「文学館の間口を広げていきたい」とし、若い世代が来館するきっかけとして多彩な催しを積極的に開催する方針を示した。インタビューの主な内容は次の通り。

  ●「館長、お帰りなさい」

 ―就任から1年たったが、手応えはどうか。

 1カ月に10日間ほど富山に来ているんですが、タクシーに乗ると「館長、お帰りなさい」と運転手さんから言われるようになりました。食事に出ると、皆さんが文学館のことを話題にしてくれて、盛り上がってきたとの手応えはあります。

 ただ、県内でも遠方の人を中心に文学館を知らない人がいます。だから県美術館、県水墨美術館、県立山博物館と文学館の4館連携でイベントを行いたいと考えています。

 ―来館者は今年度2万人ほど増え、9万人になる見通しだが、今後の課題は。

 やはり若い世代の文字離れが進んでいて、「若者は本を読まない」「電子書籍にも触れない」と全国の館長会議でも話題になりました。若者が興味を持つ題材と、文学館の接点を考えていきたい。ある企画展では職員に勧められ、その人物にまつわる絵本を描きました。絵本にすることで、企画展そのものを分かりやすくし、見応えのある内容になったと思います。

  ●全国から絵手紙募集

 ―活字離れが進む中、何かアイデアはあるか。

 文字から入るのが難しければ、映像という手段もあります。富山県出身の監督、富山県を舞台とした映画のアーカイブ充実に努めたり、絵手紙の企画も考えています。富山県はウェルビーイング(真のしあわせ)を強調していますが、これをテーマに全国から少し大きめの絵手紙を募集し、展示します。本以外でも間口を広げ、やがて文学に親しんでもらいたいですね。

 ―「室井滋の夜噺(よばなし)」「文学サロン」は新年度にどう展開するか。

 文学館はすてきな館(やかた)です。「夜噺(よばなし)」は今年度、1回目から入場希望が多く、椅子の配置を変え、廊下も使うようにし、300人収容できるようにしました。夕暮れ時から月夜になる時間帯に、怖い話から純愛話までプロの俳優さんが披露します。サロンにも作家や映画監督らを招きます。

 ―能登半島地震をどう受け止めたか。

 地震が発生した時は、東京にいました。富山は「立山が守ってくれるから安全」と言う人は多いですが、奥能登では2年前から群発地震が起きており、兆候はありました。関係者は一生懸命に復興に努めていますが、われわれは「(大地震が)起こるかもしれない」ということを人生の設計図に入れなければなりませんね。

 ―大相撲好きとして知られ、富山市出身の朝乃山ファンだが、春場所の感想を。

 勝ち越しましたけれど、どうして初日と千秋楽に負けるんでしょう(笑)。辛口ですが、勝負の世界は気持ちが大切。何かが足りないんでしょうか。でも、応援を続けていきます。

 ★むろい・しげる 富山県出身。1981年に女優デビューし、舞台、映像と幅広く活躍。数々の受賞歴を持つ。エッセイストや絵本作家として電子書籍も含め著作多数。近刊絵本に『チビのおねがい』(教育画劇)、『タオルちゃん』(金の星社)。全国各地でしげちゃん一座絵本ライブを開催中。

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