医療提供圏、3区分新設 茨城県医療審 広域連携や高度医療を集約

医療提供圏域の3区分

茨城県医療審議会は25日、県内を3区分する「医療提供圏域」の新設を含む第8次県保健医療計画案(2024~29年度)を承認した。人口減少や医師の働き方改革が進む中、9区分した既存の「2次保健医療圏」だけでは救急や周産期など医療提供体制の維持が難しいとして、広域連携や高度医療の集約を進める。2次医療圏の枠組みも継続する。県は月内に計画を決定し、4月から新圏域を設定する。

新たな医療提供圏は県独自の枠組み。医療法に基づき、1エリア人口20万人以上の2次保健医療圏とは別に位置付ける。中核病院の配置、交通の便や病院同士の連携状況など地域の実情を踏まえた。3区分の周産期医療体制も参考にした。

「県央・県北圏域」は水戸、日立、常陸太田市など。「県南東圏域」は鹿行地域や土浦、取手、龍ケ崎市など。「県南西圏域」はつくば、筑西、古河市など。1圏域の人口はいずれも100万人前後となる。

県医療政策課によると、人口減少や少子高齢化で、医療機関の経営や医師確保が難しくなる医療機関が増加し、9医療圏の枠組みだけでは医療サービスが十分に提供できなくなることを想定。4月に医師の働き方改革の新制度が施行され、時間外労働の縮小により医療提供に影響が出る可能性もあるとする。

県内の救急対応可能な医療機関は22年までの約10年で2割減少。9医療圏の枠を越えた救急搬送や入院のケースが増えている。例えば、土浦協同病院(土浦市)が、救急対応可能な病院が少ない鹿行地域からの搬送の受け皿になっている現実もある。

こうした中で、救急、がん、循環器の疾患などに対応する高度医療のほか、小児、周産期など特に脆弱(ぜいじゃく)化が懸念される医療提供に関し、圏域を広域化させることで、連携、機能集約、役割分担による効率化を進めたい考え。県は9圏域ごとの医療関係者らで構成する地域医療構想調整会議とは別に、新3区分にも調整会議を設ける。

同日、鈴木邦彦審議会長は「茨城県は医療資源が少なく、高度医療など2次保健医療圏の枠組みでは対応しきれない分野もある」と説明。医療提供体制の確保へ「協議の前提となる新たな枠ができたことは前向きに捉えたい」と話した。

計画案では重点の疾病や事業に「新興感染症発生・まん延時における医療」を追加。コロナ禍を反映した新たな県感染症予防計画(24~29年度)に基づき医療提供体制を構築する。計画素案は昨年末の審議会で了承。2月にパブリックコメントを行い、県が最終案をまとめた。

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