イカとエビはドッグフードの新しいタンパク源として有望という研究結果

イカとエビは新しいドッグフード原料となるか?

世界的なペットの増加や環境への負荷から、ペットフード業界では従来の食肉よりも持続可能性の高いタンパク質源を求める動きが活発になっています。

いまのところ昆虫や植物性タンパク質が代替タンパク質の主なものですが、このたびポルトガルのポルト大学とドイツのホーエンハイム大学の研究チームによって、イカとエビという代表的な水産物をドッグフードの原材料として検証した結果が発表されました。

消化性や嗜好性などさまざまな面から、イカとエビの新規タンパク質源としての評価をご紹介します。

イカミールとエビ加水分解物を混ぜたフードで給餌実験

給餌実験に参加したのは、ポルト大学で飼育されている12頭のビーグル(オス6頭、メス6頭)でした。犬たちは毎日屋外の公園で運動する時間とリードをつけての散歩を行なっており、検査によって健康であることが確認されています。

給餌実験に使用されたフードに使用されたのは、イカミールとエビ加水分解物です。イカミールは缶詰工場から出る副産物を利用しており、加熱乾燥した後に細かく挽いて粉末にしたものです。エビは副産物(頭部と頭胸部)を加水分解したもので、こちらも乾燥粉末の形状になっています。

加水分解とは、酸または酵素を使ってタンパク質をアミノ酸またはペプチドの段階にまで分解することを指します。

イカミールとエビ加水分解物は、どちらも従来のドッグフードに使用されるタンパク質源よりも、タンパク質およびメチオニン(必須アミノ酸のひとつ)の含有量が高いことがわかっています。

給餌実験では動物性ミールを原料とした市販のドッグフードを基礎飼料として、基礎飼料そのままと、基礎飼料にイカミールまたはエビ加水分解物を混ぜたものが与えられました。イカミールまたはエビ加水分解物の量は5%、10%、15%と変化させ、それぞれ10日間の給餌期間が設けられました。

それぞれの給餌期間の後には、見かけの消化率(摂取したフードの栄養成分と、食べた後に排泄された栄養成分の量の比。一般的に消化率というとこれを指す。)、代謝エネルギー含量、糞便の形状、代謝産物、微生物叢が分析評価されました。

イカとエビはドッグフードの新規タンパク質源として有望

全ての犬は与えられたフードを完食したのですが、嗜好性という点ではイカやエビを混ぜていない基礎飼料だけの方が好まれたそうです。また、イカミールまたはエビ加水分解物が15%の割合で混ぜられたものは、最も嗜好性が低いという結果でした。

イカミールとエビ加水分解物は、犬の糞便の形状や量には影響を及ぼしませんでした。さらに両者ともに従来のフードと比較して消化率が高く、ドッグフードの新しいタンパク質源として適している可能性が示されました。

腸内の代謝産物では、イカミールを配合すると酪酸濃度が低下したのに対し、エビ加水分解物は酪酸を除く全ての揮発性脂肪酸(腸内細菌によって産生される脂肪酸)を増加させることがわかったといいます。

腸内で微生物が産生する脂肪酸は腸内環境や免疫機構に良い影響を及ぼし、中でも酪酸は優れた生理効果を発揮するものですので、イカミールと腸内代謝産物の関係は今後さらに研究が必要だと考えられます。

イカミールは糞便中の微生物叢には影響を及ぼしませんでした。しかし、エビ加水分解物の方はオシロスピラ科の細菌が増加し、ファーミキューテス属とラクトバチルス属の細菌が減少するという影響が見られました。

また、エビ加水分解物はイカミールと比較して高い抗酸化活性を示しました。

全体としてイカミールとエビ加水分解物は、ドッグフードの新しいタンパク質源として有望であることを示す結果でしたが、機能的な価値を十分に評価するためにさらに研究が必要だとのことです。

まとめ

イカとエビという身近な食材が、ドッグフードの新しいタンパク質源として消化性や栄養成分の上で有望であるという調査結果をご紹介しました。

イカはそのままでは犬には消化が悪いと言われていますが、ミール加工することで消化性が高くなり有効活用できるならありがたいことですね。エビの頭部なども食品加工の段階で副産物として廃棄されている部分が利用できるようになれば素晴らしいことだと思います。

実用化されるのはまだ少し先になりそうですが、イカやエビを使ったドッグフードが市場に並ぶ日が楽しみです。

《参考URL》
https://doi.org/10.3389/fvets.2024.1360939

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