選抜高校野球大会 常総、初戦突破 能登思い全力プレー 応援「フレーフレー航空」

待望の先制点が入り、歓声を上げて喜ぶ常総学院の応援団=甲子園

第96回選抜高校野球大会に出場した茨城県の常総学院は25日、能登半島地震で被災した石川県の日本航空石川との1回戦に臨み、1-0で勝利した。同県輪島市の校舎が被災し、系列校がある山梨県内に練習拠点を移した同校野球部。アルプス席に駆け付けた常総学院の保護者や生徒らは被災地を思いながら「両校とも頑張れ」と熱いエールを送り、声援や演奏で後押しした。

「両校が全力でプレーする姿が見たい。全国の人たちもそれを楽しみにしている」。常総学院の鈴木駿希選手(3年)の父、仁さん(44)は試合前、グラウンドを見つめて語った。

仁さんは川崎市消防局の消防士を務め、能登半島地震では輪島市で行方不明者の救助や捜索に当たった。倒壊家屋や隆起した道路、横転した車。被災地の状況に「とても野球をやれる状況ではなかったはず」と話した。

それからは日本航空石川野球部の動向を気にするようになった。この日、甲子園球場で目にしたのは、はつらつとした動きで試合前の練習に励む選手たちの姿。「野球ができて本当に良かった」とほっとした表情で話した。

大会が幕を開けた18日には、常総学院野球部に被災地での経験を伝えた。相手校の状況を理解しようと、選手たちも真剣なまなざしで耳を傾けてくれた。「きょうは勝敗に関係なく応援したい」。試合中も両校ナインへ大きな声援を送った。

日本航空石川のエース、蜂谷逞生(たくま)投手(2年)と小学校時代にチームメートだったという常総学院野球部の渡辺康太さん(2年)は「野球ができるのかと心配していた」と話した。

恒例となっている両校応援団のエール交換では、応援指導部の豊島涼乃(すずの)団長が声を張り上げた。「フレーフレー航空!」。常総学院応援団が陣取る三塁側アルプス席も一体となり、被災地を応援する気持ちも込めた。豊島団長は「東日本大震災の時にもらった勇気を、今度は私たちが届けたい」と意気込んだ。

白熱した投手戦となった試合は、六回に先制した1点が勝敗を分け、常総学院が2回戦へ駒を進めた。

両校ナインの健闘を見守った仁さんは「お互いの全力プレーが見られて良かった」と満足そうな表情。次戦に向け、「一戦一戦を大切に、自分たちの野球をしてほしい」とエールを送った。

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