出版社の給料事情 Gakken、初任給25%引き上げ 残業代込み30万円に 他社編集者「実用書専門では厳しい」

出版大手、学研ホールディングスのグループ会社であるGakkenは、2024年4月以降に入社する新卒社員を対象に、初任給の大幅な引き上げを実施すると発表し話題となっている。

初任給引き上げは総合職の新卒社員が対象となり、現行は24万円だが、改定後は30万円となる。引き上げ額は実に6万円にもなる。これにはネット上でも多くの反応があり、「この引き上げ額の大きさは凄い」という意見が相次いだ。

出版不況が叫ばれる中での大幅な引き上げに至った背景は、Gakkenの収益構造として、医療福祉分野が売上を伸ばしていることも大きいが、次代の出版業界・教育業界を担う優秀な人材の獲得がこれまで以上に重要だと考えたためと説明する。そのうえで、今回の初任給引き上げの実施を決めたのだという。

そして、今回の新卒初任給の引き上げに伴って、若年層社員についても同様の給与引き上げを行うそうだ。Gakkenは一連の取り組みを通じて、社員のモチベーション向上を図るとともに、出版業界全体の発展に貢献することを目指すと発表している。

さて、今回の引き上げについて、記者は中堅出版社の社員に話を聞くと、「率直に羨ましいですね」という声が返ってきた。

「出版業界も働き方改革が叫ばれていますが、Gakkenさんの取り組みもその一環といえるのでしょうか。出版業界は長らく大学生の憧れの職種となっていますが、長時間労働も常態化しており、出版不況の影響で夢が語られることが少なくなったと思います。そういった中で、今回のGakkenさんのニュースは明るい話題ですね」

そのうえで、自社にはこのように注文を付ける。

「できれば……うちの会社も賃上げを実現して欲しいですね(笑)。漫画を出している出版社は業績が良いところが多くて、賃上げに繋がっている例があると聞きますが、実用書専門の出版社はなかなか実現できない気がします。あとは、Gakkenさんが取り組むような若手育成は課題ですね。うちの会社は気づいたら50代以上の社員ばかりになっていますから……」

出版業界は人材育成も急務とされている。Gakkenの場合、将来を見据え、優秀な人材を獲得したいという決意が初任給の引き上げという形となってあらわれたと言えるが、先行投資まで資金が回らないという出版社は少なくないようだ。今後の動向を注視していきたい。

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