楽しみながら未知の領域へ 転職のたび多大な成果残した49歳 入社したばかりの文具大手コクヨで描く壮大な計画

[東京報道プラス][アクロス沖縄](197) コクヨイノベーションセンター長 野底土南二・一さん(49)=那覇市出身

 転職5回、起業2回で残した実績を買われ、文具大手コクヨの新規事業責任者に抜てきされた。大学卒業後、「2日働いて、半日寝る生活」で撮影と音響、コンピューターグラフィックの技術を独学で身に付け、映像制作会社を設立。会社をフジテレビグループに売却したかと思えば、1日18時間の猛勉強で英語をマスターして米マイクロソフトに入社してしまう。異色の経歴は、持ち前のバイタリティーと努力のたまものだ。コクヨでは580人のチームを束ねる重大な役回り。それでも「みんなで楽しみたい」と気負わず、前を向く。

 「必要とされると喜びを感じ、とことん突き詰めてしまう性格」と言い、脇目も振らずに没頭することで夢をつかんできた。

 大学を卒業して入社した映像製作会社で経験を積み、26歳で独立。がむしゃらに働いて信頼を得て、大物アーティストの全国ツアーや、大手企業の映像制作を請け負うようになった。年収は8千万円を超えたという。

 一方、トップクラスの技術とセンスを求められ、「ものすごいプレッシャーに耐える日々」。睡眠時間を削り、心と体の健康を犠牲にしてまで働くことに疑問を感じ、会社を売却した。「鋼のメンタルを手に入れたのは良かった」と当時を振り返る。

 その後も転職し、成果を出し続ける。大手広告代理店の電通グループでは電子番組表のGガイドを使った広告事業、IT大手の楽天グループではポスト返却可能なDVDレンタル事業を立ち上げ、成功させてきた。

 請われて入社した大手スポーツ用品店のゼビオでは、足のサイズを3Dで計測し、顧客に合った運動靴を提供するサービスを導入。好評を得ている。

 ただ、「デジタルの醍醐味(だいごみ)はその先にある」と説く。膨大に集まった足のサイズのデータを生かし、靴を開発する事業にも着手した。現在も執行役として携わる。

 コクヨには今年1月に入社したばかりだが、300ページを超える企画書を4週間で完成させ、役員会でのプレゼンを済ませた。新規事業の実現に向け、動き出している。「日本の文具は世界に誇れるほど、性能が高い。コクヨだけでなく、競合他社も巻き込んで輸出展開すれば、海外を席巻できる」と描く計画は壮大だ。

 入社1カ月で直属の部下100人と面談した。ヒアリングを通して、それぞれの実力や関係性を把握した上で、取り組む事業の重要性を伝えた。「事業は人を起点に動く。納得してもらえるまで語っていく」とチームとも徹底的に向き合う考えだ。

 もう一つ心がけているのは「残業禁止」。「心身を壊してまで仕事をする意味も意義もない」と言い切る。口癖は「楽しもうぜ」。「仲間たちと未知の領域を切り開いていく。楽しくてしょうがない」と笑顔を見せた。(東京報道部・照屋剛志)

 のか・どなん 1974年生まれ、那覇市出身。沖縄尚学高、法政大を卒業。転職5回、起業2回を経て、今年1月から現職。趣味は自転車のBMX。日課となっている犬との散歩が、業務を整理する時間という。

「世の中にはくだらないことなんてない。何でも徹底的にやれば成果はついてくる」と語る野底土南二・一さん=東京港区のコクヨ東京品川オフィス

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