【3月26日付社説】核廃棄物の最終処分/調査地だけの問題ではない

 原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場の建設に向けた調査を受け入れる、受け入れないの二者択一で問題を解決するのは難しい。既にある核廃棄物の行き場をどうつくっていくのかを、国民全体で考える必要がある。

 原子力発電環境整備機構(NUMO)が先月、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で3年3カ月かけて行った全国初の文献調査の報告書案をまとめた。寿都町の全域と神恵内村の一部で、次の段階の概要調査に進むことが可能とした。

 日本では、核廃棄物を地層処分する方針が法律に定められているが、最終処分場は一つもなく候補地を選定している段階だ。文献、概要、精密の3段階ある調査を全て終えるのに約20年かかる。

 地質などを実際に確認する概要調査に移るには、2町村長と北海道知事の同意が必要となる。しかし道知事は反対している。2町村長は態度を明らかにしていない。

 廃棄物の処分問題は住民らが対立する構図となりやすい。先送りできない問題に向き合う地域が分断されるような事態を招いてはならない。国が前面に立ち、2町村や北海道などが冷静に議論できる環境を整えることが重要だ。

 報告書案では、寿都町の南にある断層や鉱山跡などが今後の調査の注意点に挙げられた。神恵内村では、積丹岳(しゃこたんだけ)周辺にマグマの跡があったため概要調査の候補地が一部に限定されたが、適地と不適地の境界は明確になっていない。

 最終処分に向けては、活断層や火山活動の影響がないなど安全性の確保が重要となる。必ずしも2町村が適地とは限らない。最適な建設地を選ぶために、国は候補地を増やすことが不可欠だ。

 事故を起こした東京電力福島第1原発の溶け落ちた核燃料(デブリ)は、NUMOが事業主体となっている最終処分の対象外だ。ただ最終処分を実現できないようなら、県などが国に求めているデブリの県外処分はおぼつかない。

 東京大大学院の開沼博准教授(社会学)は、「できない理由を並べて問題を固定化することは、核廃棄物を原発立地地域に永続的に置くことにつながる。議論を前に進めるために、国民が最終処分に関する正確な情報を共有し、広くリテラシーを向上させることが欠かせない」と指摘する。

 問題が行き詰まる前に国民の理解醸成を図る重要性は、福島第1原発の処理水放出で国も痛感したはずだ。核廃棄物に関心の薄い人や将来を担う若者らが、最終処分問題に主体的に向き合う機会をより多くつくることが求められる。

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