中・四国初 「学びの多様化学校」開設 ”地域をキャンパスに”/岡山・津山市 

文部科学省が指定する「学びの多様化学校」(不登校特例校)が新年度、中国・四国地方の高校で初めて美作高校=岡山県津山市=に開設される。4月6日、第1期生として22人が入学する。

学びの多様化学校は、学習指導要領の内容などにとらわれずに、不登校の状態にある児童・生徒の実態に配慮した特別な教育課程を編成し、教育を実施する学校。同校では「Bloom(ブルーム)コース」と名付け、全日制普通科の一つとして新設する。

コースの特色は▽朝登校しづらい生徒のために始業時間を1時間遅らせるなど、落ち着いて学習に取り組める環境を提供▽美作地域全体をフィールドとした学習、ソーシャルスキルトレーニングなど独自カリキュラム▽人と関わる力を育む体験学習型・探究型の社会的活動―などを行う。

これらを通して、他者とのコミュニケーションを図り、互いを尊重しながら協働でき、社会的・職業的自立に必要な勤労観や職業観を持つ生徒の育成を目指す。

教育相談室に近い位置に教室を準備。学校は保護者とともに、全教職員が共通の理解と考えのもと生徒たちを支えていく。部活動への参加も可能だ。

「高校教育は社会的な義務教育であり、子どもたちには伴走者が必要。どういう高校が不登校の子に合っているか、美作高校での取り組みは大きな”実験”になる」。同校を運営する美作学園の藤原修己理事長(86)は期待を込めてこう話す。

入学試験は600文字以内の作文と面接だった。

心因によるものなど、さまざまな理由で登校できなくなった子どもたち。藤原理事長によると、作文には「中学時代、みんなと一緒に受けることができなかった授業を頑張りたい」「憧れていた学校行事に参加したい」との学校生活への意欲をはじめ、「コミュニケーションや人間関係の幅を広げたい」「大学に進学して、お世話になった先生のようになりたい」といった純粋な気持ちが記されていたという。将来に希望を抱き、さまざまなことにチャレンジしたいという前向きな思いが表現されていた。

不登校支援に長年携わってきた藤原理事長は「不登校は子ども目線で理解する必要がある。伸びない子はいない、遅れて育つ子もいる。そして、高卒資格さえ取ればよいというのではなく、卒業後に社会参加できるようしっかりウオームアップをさせてあげたい」と強調する。

その上で「保護者に訴えたいのは、まずは早寝早起き朝ごはんという、生活リズムを整えてもらいたいこと。生活そのものが病気になっている子が多く、これをきちんとすれば、全国の不登校数はかなり減るのではないか」と話す。

地域をキャンパスに、さまざまな体験や人との関わりを通して「生きる力」へとつなげていくBloomコース。美作高校は「一人一人が思い描く夢や目標をかなえるために、生徒本人の自分らしさを出せるようなクラス経営、学校づくりに取り組んでいきたい」としている。

不登校の子どもたちへの支援について語る藤原理事長

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