「価格転嫁できず」2割 原料高で福島県内企業 運輸、サービス業など深刻 県が初調査

 原料や資材、燃料の価格高騰を受けて福島県と県内の経済3団体が初めて実施した価格転嫁の実態調査で、コスト上昇分を価格に全く転嫁できていない企業は約2割だった。転嫁できてもコスト上昇分の7割にも満たない企業が全体の8割近くを占めた。県内企業の多くが物価上昇に直面して厳しい経営を強いられている現状が浮き彫りになった。県は2024(令和6)年度、価格転嫁の環境整備に向けた企業支援策を充実させる考えだ。県が25日、調査結果を公表した。

 県内企業がコスト上昇分のうちどれだけ価格転嫁できたかの調査結果は【グラフ】の通り。調査対象企業全体を見ると、全く転嫁できていない「0割」は18.9%だった。「1~3割程度」は37.4%、「3~6割程度」は21.4%で、0~6割程度を合計すると77.7%となった。従業員が少ない事業者ほど価格転嫁が進んでいない。業種別に見ると、「0割」と回答した企業が多かったのは運輸やサービスなどで、3割を超えた。

 「価格転嫁したことにより受注・販売料の減少につながった」「下請けの立場なので価格転嫁しにくい」「交渉に失敗すると多くの仕事を失うことになるのでちゅうちょする」など、切実な声が寄せられた。

 調査は直近6カ月の価格交渉や価格転嫁の実態を把握するため県や県商工会議所連合会、県商工会連合会、県中小企業団体中央会が実施した。昨年12月から今年2月までの期間中、779社が回答した。

■福島県、独自に支援策価格適正化宣言企業へ

 福島県は今回の調査結果を踏まえ、国の制度「パートナーシップ構築宣言」の宣言企業に対する優遇を拡大し、価格転嫁の環境を整える。構築宣言は発注側と受注側の取引価格の適正化を目的としており、宣言した発注企業は受注者からの価格転嫁の相談などに応じ円滑な取引を実現させる。宣言企業には補助事業の優遇措置がある。22日現在、県内の宣言企業は328社。県は2024年度、独自に優遇措置の対象事業を広げ、特許等調査・出願経費助成事業など7事業を新たに加える。今後も随時、対象の事業を増やしていく方針だ。県商工労働部所管の委託事業(プロポーザル)の契約候補者選定に当たっても宣言企業に対する優遇措置を設ける方向で検討する。

 受注者側へ支援も進める。調査で価格転嫁に成功した理由として「原価やエビデンス(根拠)を示して価格交渉を実施した」を挙げた企業が多かった点を参考に、県は新年度から価格転嫁に関するセミナーなどを展開する。

 25日、県庁で価格転嫁の円滑化に向けた連絡会議が開かれた。国や県、県内の経済団体や労働団体などの代表が出席した。

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