あの動物園の人気者もネコの仲間。そしてワンちゃんも……!? カッコいいから可愛いまで。世界のネコの仲間たち

あなたは犬派?猫派? 犬の祖先はオオカミ、猫の祖先はリビアヤマネコといわれ、人のキャラクターにも例えられるくらい両極端なイメージの存在です。しかし、もっとさかのぼると祖先は同じ動物だったといわれています。そんな豆知識も織り交ぜながら、今回は、魅力的な世界のネコ科動物たちをご紹介します。

犬も猫の仲間!?

実は犬も生物分類上はネコ目(ネコもく)に入ります。正式に言うと、ペットで飼われている犬は、【動物界・脊椎動物亜門・哺乳綱・ネコ目・イヌ亜目・イヌ科・イヌ属・タイリクオオカミ種・イエイヌ亜種】に分類されます。

とはいえ、イヌ科はネコ科から派生したわけではなく、“ネコ目”という名前がややこしいのですが、別名“食肉目”と言い、元来捕食者として進化してきた主に肉を食べる生物のグループのこと。獲物を捕えるのに必要な目・耳・鼻・触毛(ひげ)などの感覚器官と知能がよく発達していて、運動能力も高い動物たちです。

ネコ科、イヌ科以外にもマングース科、クマ科、イタチ科、アシカ科、セイウチ科などもネコ目に含まれます。草食ですがパンダもネコ目のクマ科(クマ下目クマ科)に分類されています。ちなみに人間は、【動物界・脊索動物亜門・哺乳綱・サル目・ヒト科・ヒト属・ヒト種】です。

犬と猫の祖先は同じってホント!?

出典:Miacis/Wikipedia

ペットの代表格として人気を二分している犬と猫。実は祖先は同じなんです。名前は“ミアキス”と言い、約6,500万~4,500万年前に生息していたとされる動物です。ラテン語で“動物の母”という意味を持つミアキスは、主にヨーロッパ大陸などの森に分布し、体長は約30cm、スリムな胴体に長い尻尾と短い脚が特徴で、イタチに似た姿であったと考えられています。

上で挙げたように、犬と猫は実は同じ「ネコ目」に分類されており、“ミアキス”は生物学上ではこのネコ目の祖先に当たります。骨盤の形は犬に近く、猫のように4本足の先端から爪を出し入れすることができたと言われています。

ミアキスはどうやって犬と猫に分かれたの?

かつて森林の木の上で暮らしていたミアキスは、樹上で爬虫類や鳥の卵などを餌として食べて生活していました。しかし、次第に森林での生存競争が繰り広げられ、ミアキスの住処が次の二通りに分かれていったことが、のちに犬と猫といった異なる動物へ進化するきっかけとなりました。

草原へ移動したミアキスが犬の祖先に

森林から草原へと生活の場を移したミアキスが、その後、犬に進化していく祖先となりました。草原では森林とは異なり隠れる場所も少ないため、身を守れるように筋肉質な体と長く速く走れる脚力が発達。さらに、広い草原で狩りをするために群れで協力して獲物を追い詰めるようになったことでチームワークが必要になり、リーダーが出現して主従関係が生まれたと言われています。

そのほかにも、獲物や天敵を威嚇するために大きな声で吠える習性など、犬へと進化していく能力が身についた一方で、猫のように出し入れできる爪は退化していきました。

森林に残って暮らしたミアキスが猫の祖先に

草原へ移動せず、森林に残って暮らしていたミアキスが後に猫の祖先へと進化していきました。森に隠れて敵から身を守り、ときには獲物を狩るために足の先端から出し入れできる爪はさらに鋭く発達しただけでなく、瞬発力や聴覚、木々を移動するための優れた平衡感覚や小さくてしなやかな体など、猫へと進化していく能力が身についていきました。

草原に出て群れで生活するように進化した犬の祖先とは異なり、森林で身を隠しながら単独行動で暮らしていた名残が、猫の自由奔放な性格に残っています。

世界のネコ科の仲間たち

“ネコ目ネコ科”は大きく“ヒョウ亜科”、“ネコ亜科”の2つに分類されます。ライオンやトラなど大型の動物は主に“ヒョウ亜科”、ペットとして愛されているイエネコは“ネコ亜科”に属します。種類が多いネコ科のなかから、いくつか魅力的な動物たちを紹介します。

動物園の人気者!カッコいい大型のネコ科動物(ネコ科ヒョウ亜科)

ライオン

サハラ砂漠以南から南アフリカのサバンナに生息。百獣の王と呼ばれ、オスのたてがみのほか、生態にも特徴があり、ネコ科の動物にしては珍しく“プライド”という群れを形成して生活する。群れは1〜3頭のオスと4〜12頭のメス、その子どもたちで構成されており、狩りはメス数頭が協力して行う。

トラ

ネコ科最大の動物で、大きさは体長170~250cm、体重120~300kgほど。インド・ネパール・スマトラ・ジャワ・ロシアなどに分布し、生息環境は熱帯雨林・針葉樹林・落葉樹林などさまざま。虎模様で通じる特徴的な縞模様は林の中で保護色に。群れを作ることなく単独で生活し夜行性。水浴びを好み、泳ぎも得意。

ヒョウ

アジアからアフリカにかけて広く生息。多くは黄褐色のボディに梅花状の模様。クロヒョウにもよく見ると同じような模様がある。夜行性で単独での生活をし、餌を守るために樹上での生活を基本としている。

ジャガー

中南米に生息。バラの形に似ている黒いまだら模様が特徴。ネコ科動物の中でも特筆して身体能力が高く、木にも上ることも水に入ることも得意。

ユキヒョウ

中央アジアの高山帯に生息。白っぽい灰色の体毛が特徴的で、厚い毛は寒さをしのぐためのもの。太くて長い尻尾は、雪の中や山の斜面でバランスをとるのに適している。

ウンピョウ

ネパール東部やインドネシアの熱帯雨林など、アジア一帯に生息。 “ウンピョウ(雲豹)”という名前の通り、雲の形に似ている模様がある。木登りが得意で樹上生活に適している。

イエネコも属する、個性的でかわいいネコ科動物(ネコ科ネコ亜科)

カラカル

ロシア南部からインド北部、中東、アフリカなどに広く生息。とがった黒い耳の先に、長い毛の房がついた個性的なビジュアルが特徴。ネズミやウサギなどの小動物も捕食し、高いジャンプ力を生かして、低いところを飛んでいる鳥を捕らえることも。

サーバル

サハラ砂漠以南のサバンナにある沼地や川辺など、背の高い草木が茂る草原などに生息。小さな頭に大きな耳、長い四肢とスマートな体型から“サバンナのスーパーモデル”と呼ばれることも。足が速く、ジャンプ力に優れている。

ボブキャット

とがった耳と、その先の長い毛束が特徴的。オオヤマネコの一種で、イエネコの2倍ほどの大きさ。カナダ南部からメキシコにかけての森林や草原などに生息。性格は獰猛で、自分より大きな動物を捕らえることもある。

スナネコ

アラブ首長国連邦を中心とする中東やアフリカなどの砂漠地域に生息する、希少な小型の野生猫。大きな耳には砂が入るのを防ぐため内側に長い毛が生えていて、熱い砂の上を歩いても火傷をしないよう、足裏にも肉球を覆うように長い毛が生えている。また、砂漠で目立ちにくい灰色がかった黄色の毛も特徴。“砂漠の天使”と呼ばれるほど愛らしい見た目に反して、気性は荒い。

世界最大・最小のネコ科動物って?

最大のネコは【アムールトラ】

別名シベリアトラ。オスは体重180kg〜300kgを超える場合も。ロシアと中国の東北部の国境を接するあたりに流れるアムール川周辺に生息。北朝鮮北部にも残存説あり。極寒な地域を主な生息地としていることから、長い体毛が特徴的。水を好み、川や湖を泳いで渡ることもある。野生では約500頭しか生息しておらず、IUCN(国際自然保護連合)が作成している『レッドリスト』でも、絶滅危惧種にランクされている。

参考:

最小のネコは【サビイロネコ】

出典:File:Rusty spotted cat 2, crop.jpg – Wikipedia

体長35~48cm、体重1.5kg程度で、一般的な飼い猫と比較すると、その半分にも満たないサイズ。主にインド南部の熱帯雨林や草原とスリランカの熱帯雨林に生息。木の上で生活し、夜行性で、餌はネズミや鳥、トカゲや昆虫を捕まえて食べる。こちらもIUCN(国際自然保護連合)『レッドリスト』に登録されている絶滅危惧種で、輸入ができないため、日本の動物園では見ることができない。

キュートすぎると話題のサビイロネコの動画がこちら

https://www.youtube.com/watch?v=W86cTIoMv2U&t=10s

参考

“ネコ”だけどネコ科ではない動物って?

名前に“ネコ”とつくのにネコ科ではない動物、なぞなぞのようですが、それは“ジャコウネコ”です。ネコ目ジャコウネコ科に属し、見た目も猫というよりハクビシンやイタチを連想させます。“ジャコウ”とはジャコウシカの分泌液から作られた香料を指しますが、ジャコウネコにも似た香りの分泌液があり、加工して香水などに使用されています。またコーヒーの実を好んで食べますが、その種子は消化されずに、腸内の消化酵素や腸内細菌による発酵の働きで独特の風味が加わり、未消化のままフンに混ざって出てきます。それを洗浄・焙煎したものは“コピ・ルアク”という名の高級コーヒー豆として流通しています。

参考:

まとめ

人間の良きパートナーである犬と、マイペースで自由奔放な猫。それぞれの異なる魅力は、同じ祖先の暮らしの変化のなかで身についた能力であるという、進化の過程には驚かされますよね。 猫派の筆者としては、猛獣と呼ばれる大型のネコ科動物も、なんだか可愛く見えてしまいます。近年、“砂漠の天使”として話題のスナネコなど、今回紹介したネコ科動物がいる動物園は日本にも多くあります。猫との共通点を探してみると、また違った楽しみ方ができるかも。ぜひ親子で訪れて見つけてみてください。 文/Ai Kano

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